尽きない人材確保の悩み、自社の理念、社風の方向性を明確にすることがポイント。

エクステリア専門店各社による人材確保についての取組みが、積極的になってきている。人材についての経営者の悩みを分類すると、主に「経営面」「労働法規面」「教育面」という三つに分かれている。まず経営面だが、優秀な人材を確保しようとすると、それなりの投資が必要となる。経験者であっても、新人の給料を高く設定すれば、既存の社員にとっては不満を覚える可能性がある。かといって低い水準に合わせてしまえば、欲しい人材を逃してしまう可能性もある。経営的には、しっかりとした給与水準と公平・公正な人材の評価システムを確立することも経営者の責務となる。

次に労働法規面を見ると、まだまだ多くの専門店が残業時間の設定や社則の改定などに悩むところは多い。ここでは参考までに、悩んだ末に独自の解決策を取り入れている専門店の事例を紹介する。この専門店では、規定の残業時間を決めて、その時間以内に収まった場合は金銭で手当する。その一方で、時間をオーバーした場合は、金銭ではなく、時短の申請を行える仕組みを作っている。例えば、営業部門の残業時間の上限が30時間である場合に、その月に35時間働いてしまった時には、どこかで5時間分の時短を獲得できるというものだ。忙しくない日には、午前中で仕事を終えて、午後の時間は半休を取ることもできる。もちろん金銭にせよ時短にせよ、大幅な時間オーバーなどにならないように、残業時間の上限は決めている。この専門店は、しっかりと社会保険労務士と労働法に基づいて規約を作り直し、法的には問題のない制度を仕立て上げたという。

最後に教育面をみると、経営者にとって一番悩むのは、仕事を覚えて三年くらいして、いよいよ本格的な戦力になるというときに辞められてしまうというケースである。これはベテランが辞めるのと同様のダメージである。教育はしっかりと行っても、その先の選択肢は社員次第ということであり、こればかりは経営者の思い通りにはならない。「どうせ辞めるなら一週間で辞めてくれた方が良い」というのが本音ではないか。

人材がいくら優秀だからといって、最後はその人が社風に合うかどうかが一番のポイントであろう。給料が高くても人間関係が複雑で居心地が悪ければ、人材はすぐに流出してしまう。いかに自社の社風に合った人材を確保できるかが、大きなポイントとなる。前出の専門店の社長も「会社がどういう理念で、どういう方向性を持った会社なのかを前面に打ち出すこと。例えば給料が低くても独立志向の人材を獲得して、独立やのれん分けを推奨する軽い会社とするのか。それとも社員として家族のようにコミュニケーションを取っていく家族経営のような会社にするのか・・・。経営者がしっかりと理念を決めて、それに従って、それぞれ目的を持った人材を確保することがポイントなのではないか」と話している。

著者プロフィール

株式会社住宅環境社
株式会社住宅環境社佐倉慎二郎
佐倉慎二郎 ㈱住宅環境社 代表取締役社長
住宅建材業界、エクステリア分野の専門誌記者・編集者25年。2006年より「月刊エクステリア・ワーク」を発行する㈱住宅環境社入社。2014年に代表取締役社長に就任。現在は住宅と外構・エクステリアを融合する「住宅と庭との一体化設計」と、非住宅分野である商業施設(コントラクト市場)における庭空間の市場開拓を探る「サードプレイス『庭・快適空間』」を発刊。ホテル、レストラン、商業施設などに向けての情報提供や、まちづくり、異業種コラボレーションに向けての提案を行っている。