現在のエクステリア販売工事店の受注動向はあまり良くない

取材してみると現在のエクステリア販売工事店の受注動向は、あまり良くないという声が多く、特に中京地区の有力販工店では、昨年11月から展示場集客、チラシ反響率ともに大きく対前年を下回ったというように聞いている。

その要因として考えられるのは、まず新設住宅着工数の影響が挙げられる。2016年の新設住宅着工戸数は前年比6.4%増の96万7237戸、2年連続で前年を上回ったが、残念ながら、エクステリアのボリュームゾーンとなる持家の数は、前年とほぼ横ばいか下落傾向にあるのが実情のようだ。その反面、着工数を伸ばしているのは、相続税の節税対策として賃貸アパートなど「貸家」需要であり、このニーズは、エクステリア販工店にとっては価格競争が厳しい市場であり設計・施工で請け負うという時間軸ではこなせない仕事といえる。

これまで新築依存で経営をしてきた販工店にとっては、まさに、これからの市場は厳しいものになると予想されます。

今後さらに注視していかなければならないのは、住宅業界によるエクステリア業務への進出ではないだろうか。今まで地元の販工店に投げていた外構を、ハウスメーカーが自社で行なおうとする動きが活発になっている。ハウスメーカーは販工店に対しては材料指定を行い、工事のみ依頼するという形態を取ってきたが、今度は自社の設計部門にエクステリアを習得させる動きを見せているのだ。最近、ある大手ハウスメーカーの営業マンが「ブロック塀診断士」の資格を取得するための研修に参加した、という話も聞かれたのはそのひとつと考えられる。

いまのエクステリア業界の販工店の7割が、新築住宅の付帯外構をメインにしていると予想している。今まで弊誌が取材、あるいは研修会などで接点を持ってきた販工店は、ほぼ新築7:リフォーム3という比率であり、これはそのまま下請7:元請3という比率にも繋がっていると思われる。しかし、ごくたまに出会う販工店の中に、リフォーム9割=元請9割という会社も出てくるのがこの業界の面白いところでもあるが・・・

こうした進んだ会社は脱・新築依存を経営ポリシーとして明確に掲げており、たくさんの金物商品を捌けるだけの営業力を持ちながら、手の掛かる高額物件へのデザイン力も兼ね備えている。いずれも「自分たちは下請けとして、商品の〝取り付け屋〟にはなりたくない」という強い意志を持っていて事業している。幸いなことに弊誌の読者層は、ほとんどが脱・下請依存を志す専門店ばかり、だから情報もしっかりと有料で買い、ビジネススキル向上のための研鑽にはお金も惜しまず投資する性質を持っている会社が多い。

ちなみに脱・下請依存は、「脱・下請」とイコールではない。形態は下請であっても、ハウスメーカーの専属設計施工部門として活躍している優良企業もいる。そういう会社は逆にハウスメーカーを選べる立場にあり、デザインと設計力と、高いコミュニケーションスキルによって、独自のポジションを獲得している。エクステリア販工店でありながら、建築家的なデザイン事務所という立場で、地場ゼネコンや工務店に接している会社もある。

これからの時代は、大きく2つの道があるのではないかと考えている。

自社が多様な元請からの「取り付け屋」として生き、それを極め上質な職人集団となるのがひとつの道。もうひとつは、それとは別に、脱・下請け依存でエンドユーザーから支持される「専門店」として生き、それを極めてエクステリアを高く売る建築デザイン事務所となる道です。こうなれば、エクステリア専門店は設計・デザイン力のない地場ゼネコンとタッグを組む建築家集団のような存在となれると考えられます。どちらの道も正解・不正解ということではないが、重要なのは、どっちつかずの中途半端が一番淘汰されることになる。

販工店経営者は、しっかりとした経営の方向性をもう一度確認し、勇気ある舵取りが求められるようになる。

著者プロフィール

株式会社住宅環境社
株式会社住宅環境社佐倉慎二郎
佐倉慎二郎 ㈱住宅環境社 代表取締役社長
住宅建材業界、エクステリア分野の専門誌記者・編集者25年。2006年より「月刊エクステリア・ワーク」を発行する㈱住宅環境社入社。2014年に代表取締役社長に就任。現在は住宅と外構・エクステリアを融合する「住宅と庭との一体化設計」と、非住宅分野である商業施設(コントラクト市場)における庭空間の市場開拓を探る「サードプレイス『庭・快適空間』」を発刊。ホテル、レストラン、商業施設などに向けての情報提供や、まちづくり、異業種コラボレーションに向けての提案を行っている。

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