4.窓が変わると庭も変わる
4回目のテーマは
『 窓が変わると庭も変わる 』です。
窓は室内と庭を「視覚的」また「物理的」につなぐ。窓の位置と大きさで庭のデザインは大きく変わります。デザインが変われば、当然コストにも影響を与えます。
建物の設計が決まりつつある中で、エクステリアデザイナーから間取りを大きく変える提案をするのは難しいことも多いと思います。しかし窓の大きさや位置は、変更しやすいこともありエクステリアデザイナー側からの提案が受け入れられやすい部分です。デザインとコストの両面から提案できれば、より良い住まいづくりになるはずです。今回は窓の位置や大きさが変わると庭デザインがどう変わるのか考えてみます。
メルマガ第2回目の「室内と屋外をひとつの空間として計画する時に大切なこと」でもお伝えしました。窓と庭の大きな関係のひとつは「視線」です。
室内から窓を通して外がどんな風に見えるのか。心地よい空間を作るためには何が必要だろうか?道ゆく人や隣家からは窓を通して室内がどんな風に見えているのか。心地よく過ごすことへの妨げになっているものはないだろうか?これらはエクステリアを設計する上で重要なポイントです。
● 腰高から天井近くまである窓
一番多い、一般的な窓です。立っているとき、窓から外は常に視界に入ります。外からの視線が気になる場合はエクステリアでの調整が必須。それがなければカーテンを終日閉めたままで外への繋がりのない窮屈な印象の室内になってしまいます。
背の高いフェンスで目隠しを設けたり、樹木で視線を散らしたり、安心して過ごせる工夫が必要です。GLに近い部分は室内から見えないので特に処理は不要です。
● 床から腰下あたりまでの地窓
庭を見おろす視線が生まれます。視線を制御しつつ庭を見せるために設けられることが多い窓です。中と外の繋がりを持たせる処理が必要です。
地面がGL高さのままだと1FLとの高低差が大きく、庭部分がグッと深く低くなり狭く感じてしまいます。より効果的な庭にするには盛土をし、できるだけGLと1FLの高さを近づけます。大きな木を植えても上部は見えないので、植物は草花・潅木・低木を選びます。どんな景色を作るにしても、その背景の収め方が重要。室内から見える範囲は視線が庭より外へと抜けてしまわないように塀やフェンスを設けコントロールします。
● 床から高さ300mm程度の低い地窓
ほとんど地面しか見えない窓です。室内から外側へ向けての景色も期待できず、スペースも狭い場所に設けられることが多い。
先の地窓と同じく盛土をし、できるだけGLと1FLの高さを近づけます。見えるのは、ほとんど地面なので植物を見せるだけでなく、庭の床面デザインにも一工夫することで印象が大きく変わります。植物は背の低い草花や潅木が中心になります。視線のコントロールという意味では、塀やフェンスは特に必要ないことが多いです。
3つの窓を比べてみると、3番目の地窓が庭づくりのコストを低く抑えることができそうです。外からの視線を気にする必要がないので、夜も庭をライトアップして「室内から眺める庭」にしておくことも可能です。
窓はインテリアのレイアウトにも大きく影響します。腰から上の窓なら前にソファーを置いたりテレビボードを置いたりできますが、地窓なら前の床には何も置くことが出来なくなります。テレビは今では壁にかけることができるので取り付け可能ですね。インテリアのことも意識しながらの提案を心がけたいところです。
次に和室の事例をご紹介します。
南側の庭に向けて掃き出し窓を設ける設計となっていました。庭スペースは奥行き1Mほど。裏の古い家が見えないように考えると背の高い目隠しフェンスが必要でした。
庭は外に出るほどのスペースはありません。住まい手は、近い位置で高い壁に囲い込まれて圧迫感があると感じていました。モダンな雪見障子を設ける話も出ていました。建築設計士と住まい手と私(エクステリアデザイナー)のミーティングで色々な検討をした結果です。
掃き出し窓を高窓と地窓に変更し、中央部分は壁を残すことにしました。隣地との視線を気にする必要がなくなった庭では、背の高い目隠しフェンスを低めの塀に変更し、植物も下草中心に。開口が制限されたことで落ち着ける和室になりそうです。結果的に庭にかかるコストも当初より抑えられることになりました。開口は広ければ良いという訳ではないということを改めて感じた案件でした。
建築設計が決定する前にエクステリア計画に着手できなければ、このような検討もできません。建物とエクステリアを同時に計画することができれば、より住まい手の満足度の高い暮らしを実現することができる。エクステリアデザイナーとしては物件に関わる期間は長くなるのですが、常にこのような関わり方ができればと思っています。
エクステリアを最適に計画することは、快適な暮らしに欠かせないものです。窓だけでなく間取りを検討するときにもエクステリアデザイナーの視点を活用することが、これからは大切になってくるのではないでしょうか。
著者プロフィール
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個人住宅の庭・外構や店舗のエントランスガーデンなど、あなたのライフスタイルに調和する外空間のデザインするGokansha(ゴカンシャ)代表。
二級建築士、インテリアコーディネーター、二級造園施工管理技士、福祉住環境コーディネーター、園芸療法リーダー二級、ハーブコーディネーターなど様々な資格を持ち、建築士でもあるため住宅目線・エクステリア目線・ガーデン目線、それぞれの記事を発信いたします。
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