「我が社の強み」に学ぶ、4回目 後編「株式会社アクティブ」
外構工事全般を手がけ、「高付加価値提案」で売上実績を上げているエクステリア専門店をご紹介いたします。
第4回目は、外構やエクステリアのみならず新築物件の建設も手掛けている、
滋賀県野洲市の株式会社アクティブ 代表の上堂地 昭さんに、
「我が社の強み」について、お話をお聞きしました。
「これくらいはいいだろう」という工事を絶対にやらないことも含め
数字ばかりを追いかけないことで結果的に売上が伸びた
事業には流れやリズムというものもある
焦って数字ばかりを追いかけない方がいいことも
–前回は、一定の周期で拡大と停滞があったと伺いましたが、一般に売上が停滞した時にこそ経営者の腕が問われるとも言われます。停滞期にはどのような手を打たれたのでしょうか。
特に焦って何かをした覚えはないんです。むしろ、売上が伸びている時に無理をしている部分が見えてきて、あえて押さえている部分もありました。
ただ、今思うと絶妙なタイミングでいろんなことが起こっているんです。たとえば、経理を自分でやるようになったのも、従業員の入れ替えがあったのもその時期でした。どれも、売上低下の原因を追究して手を打ったのではなく、行きがかり上そうなったというのが多いのですが、結果的にはそれが次のステップアップのために必要な事だったんだなと今ならわかります。
商売って不思議なもので、その渦中にいる時はまったく見えていないことも、後から振り返ると、今に続くための自然な流れだったんだということが多々あるんですね。いや、商売だけでなく、人間の歴史そのものがそうなのかもしれません。関ケ原の合戦が半日で終わると誰が思ったでしょう? でも、現代に生きている私たちから見れば、その前の徳川家康の動きからして、なるべくしてなったとしか言いようがないんだけど。
JIS規格の製品を使いメーカーの規格に沿った工事をする
それだけは絶対にゆずれない創業時からのこだわり
–無理に数字を追うことばかりが良いとは言えないということですね? 足元を固める時期も必要だと。
そうですね。数字ばかり見ているとやっぱりどこかで歪みが出て、手抜き工事みたいなことが出てきたりするでしょう? 僕、あれだけは絶対に許せないんですよ。今でもたまに現場に見に行くことがあるんですが、納得いかない工事をしていたらすぐにやり直させますよ。以前、カーポートの基礎工事でセメントを使おうとしていたことがあって、頭から火が出るくらい怒って怒鳴り付けたこともあります。「なぜ、生コンを持って来ないのか? 何かあったら責任取れるのか?」って。生コンもってきていても、現場の作業が遅くて時間がかかりそうなら「硬化が始まるじゃないか! 新しいものを持ってこい!」とかね。
土木業界の経験があるということもあって、見えないところの手抜き工事がどんな結果になるかはよく知っているつもりです。JIS規格商品を使う、メーカーさんが規定した通りの方法で工事を行う、これは大前提です。よほどの事情でそれが叶わない場合は、出来得る限りの対処をします。
–安全のため、ということですか?
安全だとか安全じゃないとか、もうそれ以前の問題です。JIS規格にしても、メーカーの施工規定にしても理由があるからそう決まっているんです。おそらく工務店によっては「過去の経験上これくらいは大丈夫」と思って自己流の工事をやっているのかもしれませんが、それがどうなったかというと、災害のたびに家屋の被害が相次ぐことを見てもわかります。関西でも2018年に大阪北部地震や西日本豪雨があって、その影響による修繕の依頼がどんどん来ていてまだ終わっていないくらいなんです。
小さな案件ばかりで正直言うとほとんど利益にはつながらないんですが、お引き受けした限りはきっちりと責任を持って仕上げないといけないと思っています。
–そうした小さな仕事も信頼関係を築くことに役立ち、将来の受注に結びつくということでしょうか。
そんなことは考えていませんよ(笑)。ただ、このあたりでも多くの被害が出たので、やっぱり頼まれるとそれではやりましょうという話になるだけです。保険申請のための添付写真を撮ってさしあげたりするのも、我々がお客様より家のことや制度の仕組みをよく知っているからということにすぎません。
ちょっと話はずれるかもしれませんが、ずいぶん以前にYKK APの工場見学に招待いただいたことがあるんです。そこで役員の方が「YKK APの経営理念は、他人の利益を図らずして、自ら栄えることができないと」とおっしゃっていたんですね。まさにそれと同じです。5年前にこの事務所を建て替えた時に外に向けて防犯カメラを付けたのも、その言葉を思い出して地域の防犯の役に立てばと思ったからです。この街にこの会社があって良かった、と地元の方にそう思ってもらえればいいなと、そう考えています。
経営のカンを鈍らせるのは、頭で考えすぎること
非日常の環境に身を置くことでリセットを図るのも大切
–失礼しました。数字にこだわっているのはこちらのようです(苦笑)
いやいや、商売はやはり数字ですからね。僕だって売上のことを考えて眠れない夜が続くこともあります。
実際、あともう少しで頂上だという瞬間が一番つらいんですよ。山登りと一緒で、ふもとのあたりを歩いている時は足元を見つめながら一歩一歩進むことができるんですが、頂上が見えた瞬間、たまらなく苦しくなるんです。「早く到達したい」と気持ちは焦る。でも、頂上付近は勾配もキツイので、上り始めと同じような歩調で進むことはできない。だから苦しいんです。体力も限界に近付いているでしょうが、それ以上に、「こんなに近くに見えているのに、なかなか近づかない」という相反する状況が、苦しさをより大きなものにするんです。
つまりね、人間、余計なことをごちゃごちゃ考えてしまうから、自分で自分を追いつめてしまうことってありますよね。無我夢中でやっている時は簡単にできていた判断も、考えすぎてできなくなることがある。
-そんな時はどうすればいいんでしょう?
頭で余計なことを考えるのを止めるために、仕事とまったく関係のないことをする時間を持つのがおすすめです。趣味を持ったり、遊びに出かけたりするのもいいでしょうし、もっと荒療治をするなら一人で海外へ行くのはどうでしょう?
実際に、僕もやりました。航空チケットとホテルだけ取って、初の韓国一人旅へ出かけたんです。ところが、現地の空港へ着いて早々、自分の情けなさと向かい合うことになります。地下鉄にもバスにも乗れず、結局タクシーでホテルに行ったんです。冒険できずにラクな方法を選んだんですね。ホテルにチェックインした後街に出てみたのですが、言葉が通じないのが怖くて食堂にも入れない。仕方なくコンビニでおにぎりを買ってホテルに戻り、日本語放送を観ながら食べました。「さあ、異国だ。羽を伸ばすぞ!」と意気込んで日本を出たはずなのに、その羽はちっとも広がらなかった(笑)。
翌日は「今日はコンビニだけは入らないぞ」と意を決して出かけました。思い切ってホテルの最寄り駅から地下鉄に乗ってみたり、小さな食堂に入って写真を指差しながら注文してみたり。よしよしこの調子だとカジノにも行ってみたものの、加わる勇気がなくて、ずいぶん長い間、台の後ろで見てました(笑)。
そんなことを繰り返しながら数日過ごしていたわけですが、日常と切り離されたところに身をおくと、自分自身のことがよく見えてくるんですね。自分の弱さや限界、ダメなところを嫌と言うほど味わいます。その際中は面白くもなんともない。でも、帰国して1週間ほど経つと、だんだん冷静になってそれを受け入れられるようになるんですね。逆に「まったく初めてにしてはなかなか頑張ったんじゃないか」という気持ちも出てきます。
–強引に意識をリセットして、経営判断に余計な邪念が入らないようにするのも大切だということですね。最後に、今後めざす方向性などがありましたらお聞かせください。
近々、本社事務所の近くに、新しく路面店をオープンする予定です。そこではリフォームや外構だけでなく、網戸の張り替えからカーポート設置を単体で受けたりもしたいと思っています。いうなれば“よろずや”のような存在の店舗を作ろうと。
外構と建物の一体化という方向も継続しつつ、また別の方向からの関わりも考えてみようかなと思うこともあるからです。ガソリン自動車が電気自動車に、ブラウン管テレビが液晶テレビになったように、もしかしたら「家」というものも、この先思いもよらない方向に進化するかもしれません。ダーウィンが進化論で現したように「環境に変化していたものが生き残る」のだとしたら、やっぱりその時々の時代の変化についていけるようにはなりたいですね。
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