「我が社の強み」に学ぶ、3回目 後編「岡本ガーデン」
外構工事全般を手がけ、「高付加価値提案」で売上実績を上げているエクステリア専門店をご紹介いたします。
第3回目は、小売りの園芸店とエクステリア施工店を併設している大阪府柏原市の株式会社岡本ガーデン 代表の岡本 圭一郎さんに「我が社の強み」について、お話をお聞きしました。
株式会社岡本ガーデン 代表・岡本 圭一郎さん
まずは全ての希望を叶えるものを提示してお客様の心を掴む
松竹梅の予算別プランでの提案は、頼まれてもやらない
予算に縛られていては良い提案ができない
提案の一つひとつに意味があることが伝われば、価格は保てる
−前回、提案はお客様の要望の2段階上を行くことをめざしているとおっしゃっていましたが、その分、施工価格も高額になってしまいそうですね。価格交渉はどのようにされていますか?
初回の提案は希望重視で、予算に縛られないものをお見せするようにしています。まずは良い提案を見せて、お客様の心を掴むことが大切。「ああ、こんな風に過ごせる庭になるんだ」と期待が高まりますからね。後で見積りを見てびっくりされることもありますが、気に入った提案なら、工面してくれることがほとんどです。
もしどうしても予算がギリギリで、という場合には、「今回は予算の都合で諦めるけど、後々、提案通りにこの部分にも手を入れたい」といったように、何回かに分けて注文をいただくこともあります。それも、提案が気に入っていただいたからで、最初から予算を上限とした提案をしていたら、それなりのものしかできません。
もちろん、絶対にこれ以上出せないというラインがわかっていたらそれに応じたものを提案しますが、かけひきが目的で価格別に複数パターンの提案を求められた場合には、絶対に応じません。その場では「わかりました」と言うものの、お持ちするのは全力でお客様の希望を叶えるプランひとつだけ(笑)。提案は気に入ったけど金額が合わないということであれば、何かを削りましょうか、ということで落ち着かせます。
−お話はお客様のご自宅で行いますか? それともオフィスで?


CAD図面を見せながら説明した後は、庭に出てもらうことも多い
オフィスに来ていただき、PC画面でCADの図面を見ていただきながらお話します。ここなら大画面でお見せできますし、その場で微調整も可能ですから。
また、すぐ外に展示場を兼ねたガーデンスペースを作ってある ので、お天気のいい日は一緒に出ていただくんですよ。そこで風を感じたり日差しを浴びたりして、植栽がある庭の良さを体感してもらうんです。それまでのご説明で、図面に配置した構造物や植栽の一つひとつに意味があることをお話ししているんですが、やっぱり実際に緑のある空間に身を置いてもらうと、実感がわきますよね。お客様の納得の度合いがぐっと深まります。
−最終的には、どれくらいの規模の受注が多いのでしょうか。
30万、40万円くらいのものから、1000万円を超えるものまで様々です。平均すれば200万円くらいでしょうか。昨年は、2200万円の案件もありました。とても広い庭だったので、外構、外壁はさわらず庭だけでそれくらいの金額になったんです。具体的なプランとしてはYKK APの「リウッドデッキ200」で建物をL字に囲み、リゾートを感じさせるプライベートなアウトドアリビングを作りました。こちらは、お客様にも大変喜んでいただいたとともに、2018年のYKK APのエクステリア スタイル フォトコンテストで銅賞にも選ばれました。

お客様から褒めていただけるほど、職人の質には自身がある
大切なのは長い目で見て、こまめなコミュニケーションを取り続けること
−施工はすべて自社で行われるのですか?

植栽はお客様自身と相談しながら選ぶことも。
枝ぶりや葉の付き方などを実際に見てもらえるのは園芸店を併設していることのメリット。
いえ、植栽はすべてうちでやりますが、エクステリア関連の施工については、外注しています。依頼する職人さんたちは長年付き合いがある方ばかりで、施工技術はもちろん、マナーもしっかりしています。その点は、提案の際にも岡本ガーデンの強みのひとつとしてお伝えしますし、施工後にお客さまからお褒めいただくことも本当に多いんです。
−どのようにすれば、そういった方々を見つけることができるのでしょうか。
実は、最初からそういう方ばかりだったわけではありません。なかには気性の荒い方や、言葉遣いが荒い方もいましたし、いちいち面倒くさいからとヘルメットをかぶらないといったこともありました。しかし、その都度、それでは困るということをお伝えし、きちんとしていただけるなら、こちらは継続して仕事をお願いしたいということを言い続けたんです。今でも月に1回職人さんたちとミーティングを行っていますが、やはりこまめなコミュニケーションをとり続けることは大切だと考えています。本当は、職人さんが増えれば、受注案件自体はもっと増やせるのですが、つながりの浅い職人さんを単発でお願いしてトラブルが起きるのはリスクです。しばらくは今の体制のままで着実に実績を積み重ね、むしろ一案件あたりの利益率を上げていくことを考えていきたいと思います。
庭が完成するまで植栽の成長に合わせてメンテナンス
お客様とのつながりを保ち続けることでリピートが増える
−具体的にはどのようなことをお考えですか?

エクステリア施工を初めてまだ10年程度にも関わらず、YKK APはじめ各メーカーのコンテストも数多く受賞している
同じ内容でコストを下げるために、資材の原価を抑えるとか、無駄を削るといったことでしょうか。あとは、1提案あたりの単価を上げていくこと。たとえば、最近、地震や台風などの自然災害に備えようという気運が高まっています。我々、業界側としてもそうですが、お客様の気持ちのなかにも、多少お金をかけても安全に暮らしたいという思いが強くなってきている。そこで、そういうニーズに応える提案を積極的にしてこうと思っています。
幸い、うちの場合、一度ご依頼いただいたお客様とのご縁が、引き渡し後も長く続きやすいというメリットがあります。というのも、岡本ガーデンが作る庭は植栽を使ったものがほとんどなので、樹木の成長に合わせた定期的なメンテナンスがどうしても必要になるのです。樹木の手入れに関する情報は可能な限りお教えしているのですが、やはりお客様ご自身では手間も時間もかかります。そこで、「ガーデンメンテナンス」という形で、樹木の剪定や施肥、消毒などを格安でお引き受けしているのです。
そうやって定期的にお客様とつながる機会を持つことで、家族のライフスタイルの変化も掴むことができ、新しい提案の機会が増えます。何より、時間をかけて信頼を築くことができるため、お客様の方からお声掛けいただくことも多いのです。
エクステリア施工を始めた当初は、上手くもない手書きの図面を持ってお客様のところに提案に行ったり、慣れない手つきで自らブロックを積んだりしていました。それからほんの10年ほどで、ここまでになるとは思っていませんでしたが、やはり、エクステリアのなかでも特に植栽という大きな差別化要素があったことが、業績の伸びにつながっていると思います。
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