5.キッチンサイドのエクステリアが暮らしを楽しくする

『建物からの目線でエクステリアを考える』の
5回目のテーマは
【 キッチンサイドのエクステリアが暮らしを楽しくする 】

 

エクステリアとキッチンの関係というと何をイメージされるでしょうか?

一般的な家の間取りだとキッチンサイドはバックヤードになりがちですが、メインガーデンと隣接していると楽しい空間を生み出すことも可能になります。

庭での食事時間を楽しむ時は、庭で火を起こすことが多いと思います。「BBQコンロ」や、最近では「ピザ窯」を設置される方も増えています。火を囲んでの時間はゆったりリラックスした気分になり、家族や仲間との会話も弾みます。とても良い時間が生まれるのですが、準備や後片付けに時間がかかることもあり、ハードルを感じることもあるのではないでしょうか?「よしっ!」と気合を入れないと始められないような。

もっともっと気軽に、決して特別でない日常で、庭での食事時間を楽しむことができれば庭の利用価値も高まります。

「キッチンガーデン」という言葉もポピュラーになりました。野菜やハーブなどの食べられる植物を育てる場所を庭の中に設けて収穫を楽しみます。キッチンガーデンは実際に料理を作るキッチンとの動線が上手く繋がっていると、とても使い勝手良く植物の利用頻度も増えていきます。わざわざ収穫のために時間を確保して庭に出るというイメージではなく、料理をしている最中に必要な香辛料となるハーブを摘んだり、盛り付けにほんの少し加えたいベビーリーフを収穫したり。毎日の食事準備の時に気軽に利用したいものです。

これもまた、庭の利用頻度が上がる要素になります。

キッチンサイドの庭をもっと活用できる。そんなキッチンと庭の関係を考えてみましょう。

【1.失敗しないキッチンガーデン】

野菜やハーブを育てるキッチンガーデン。計画の際に一番気をつけることは「日当たり」です。日当たりが悪いと野菜やハーブの生育もよくありません。また、虫がつきやすいなどトラブルも起こりやすいです。庭の中で太陽の陽射しが十分に当たる場所であり、キッチンとの動線が良いところが「キッチンガーデン」に適した場所です。

南庭の場合、一番日当たりが良いのは建物に面した部分です。一年中たっぷりの日射しが期待できます。エアコン室外機に占領させてしまうのは勿体無い場所です。そして、キッチンから近い場所。室内からスルッとウッドデッキに出て、すぐ横にあるキッチンガーデンで収穫。月桂樹やイタリアンパセリ・ローズマリー・タイム・・・ガーデンから鍋へ直行です。こんな話をすると、お客様の瞳もキラキラします。

キッチンサイドで押さえておく必要があるのが「ダストスペース」。ゴミ置場です。生ゴミ・プラスチック・ペットボトル・・・分別するのでゴミ箱も複数個必要です。部屋から見えにくくてキッチンから近い場所でなければ、ついつい面倒でゴミの室内放置時間が長くなってしまいます。少しのことで人の行動は違ってきます。

【2.日常の庭ダイニング】

いつもの休日のランチタイム。天気の良い日はダイニングテーブルを窓側に移動させてみる。これだけで、いつもとは違う気分が生まれる。日射しを浴びる明るいテーブルはワクワクさせてくれます。

インテリアの家具を室内だけのものと考えないで、少し外にはみ出すこともOKにしてみる。ただそれだけで心地よい時間を作ることができてしまいます。定位置を決めると動かすことも少ないインテリア家具ですが、もっと気軽に頻繁に移動させて良いのです。たったこれだけのことですが、それを可能にするキッチンダイニングと庭との繋がりを持っていなければ出来ないことです。

【3.大人数の庭ダイニング】

家族プラス親戚や両親、時には仲間が集う。頻繁ではないけれど、大人数でも対応できるようにしておきたいものです。でも、それを前提にデッキやテラスを検討すると大きなものになってしまいます。一年に数回のことのために大きなデッキスペースを確保しておくのか。住まい手のライフスタイルや価値観によって選択の変わるところです。

椅子座と床座を混ぜるとデッキが広くなくても、まだまだダイニングを広げることができました。屋外だけを使うとか室内だけを使うとか、決めつけないで両方使えば住まいの空間はまだまだ広がりそうです。

家の中をどれだけ外にはみ出していけるか。はみ出していける庭をデザインするか。庭の利用頻度を上げるためには重要なことです。無意識にはみ出していくためには開口部が重要。『室内と屋外をひとつの空間として計画する時に大切なこと』でも触れましたが「全開放できる窓」は、庭の価値を上げる大きな要素です。一家に一ヶ所、全開放の窓が当たり前になれば、庭のある暮らしを豊かに育む家族も増えていくはずです。

植えて育てる植物に関しても「食べられる」という視点がポイントです。植物は長年にわたって、全く手入れが必要ないというものはありません。花が綺麗な花木、紅葉が綺麗な樹木など、成長に合わせて何らかの手入れが必要なものです。手入れができないという理由で植物を育てることを敬遠する人も多いです。でも「食べられる」植物なら、剪定も収穫になります。面倒な手入れと思っていたことが、収穫物を得る行為に変わるのです。面倒なことから、ありがたい収穫へ。同じことでも視点を変えると意味が変わります。住まいづくりに携わる私たちが、出会う一人一人の住まい手にお伝えしていくことで、緑豊かな暮らしと街が増えていけばいいなと思っています。

著者プロフィール

冨田ちなみ
冨田ちなみGokansha(ゴカンシャ)
個人住宅の庭・外構や店舗のエントランスガーデンなど、あなたのライフスタイルに調和する外空間のデザインするGokansha(ゴカンシャ)代表。
二級建築士、インテリアコーディネーター、二級造園施工管理技士、福祉住環境コーディネーター、園芸療法リーダー二級、ハーブコーディネーターなど様々な資格を持ち、建築士でもあるため住宅目線・エクステリア目線・ガーデン目線、それぞれの記事を発信いたします。

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