2.機能や性能を中心とした「門まわり」の施設を考える
1)門に求められるものとは何でしょう?
門の歴史をみると、他から守る機能が起源と考えられます。
社会状況が全く異なる現在でも住宅にとってのセキュリティ機能は必要となってきます。
また、門は場所を印象する力があり。ステータス性やシンボル性を感じとれるものでもあります。
この機能は社会が変化しても形を替えて存在しており、住宅の門は、表と内の境を人に意識させ、住まいを象徴するものと考えられ、公と私の境と見ることもできます。
人に意識の切替を促すには、視覚に訴える方法がよく使われ、この働きかけの強いものが「大きな門」や「重厚な門」です。象徴的なポールの間を通り抜けるというような「門に代わるもの」では働きかけが弱く軽いと感じます。
この強弱や軽重が門周りのデザインの大きな要素と言えます。
近年の門は、従来からの門という形態によるばかりでなく、様々な手法と形態が用いられるようになっています。門周りの素材の組み合わせ方やシンボルとなる植栽や彫刻像などの配置あるいは照明による演出などが視覚に訴える方法と言えるでしょう。
2)門まわりの施設
(1)門柱
門柱を設計する際、門扉や住宅の外壁、門廻りの床面、外周囲いのデザインとの調和を考慮することが大切です。
(2)門扉
門扉は頻繁な開閉に耐えられるしっかりとしたものでなければなりません。
門扉は、開閉方式から、開き戸、引き戸、折り戸、伸縮戸、跳ね上げ戸の5種類に分けられます。
①開き戸
開き戸は、両開き・片開き、親子開き形式に分けられます。正門において、敷地に余裕がある場合は両開きが一般的です。開口部に余裕がない場合、親子(幅40cmと幅70cmの組合せ等)開きが用いられます。
開き戸には、敷地側に開く「内開き」のものと、道路側に開く「外開き」のものがあります。
外開きの場合は、開きしろが道路境界線を越えないようにしなければなりません。
また、扉の取付方式には、専用の門柱に取り付ける「門柱式」と正門柱(化粧門柱)等に直接取り付ける「直付式」があります。門柱式が強度、施工性に優れ、一般的です。
材質はアルミ形材、アルミ鋳物、ステンレス、鉄、木等があり、材質により性質・重さが異なります。
鉄製など重い金属の場合は、丁番の支持力がしっかりした構造のものを選ぶことが大切です。
鉄は強度が高い反面、防錆性が低く、ステンレスは防錆性が高いのが特徴です。
木製は軽く美観に優れますが、腐食性が高いです。現在は軽くて耐久性があり加工が容易なアルミ製品がよく使われます。加工が容易なためデザインも縦ラインや横ラインのシンプルなものから、すかし模様・アール模様の複雑なものまで多様化しています。
②折り戸
開口部が広いが、敷地の内側と側方にスペースが無い場合、折り戸が使用されます。
三枚折り戸・四枚折り戸は回転幅が両開き二枚扉と同じになります。
③引き戸
敷地の奥行きが小さく開き戸が取り付けられない場合や勝手口・ガレージの開口部等に用いられます。
レールタイプ、ノンレールタイプ、キャスタータイプ、ノンキャスタータイプの製品があります。
ガレージ等開口部が広い場合はレールタイプ、キャスタータイプが安定性、耐久性があるので適しています。
デザインは横ライン・縦ラインなどシンプルな製品が主です。
④伸縮戸
ジャバラ式門扉、アコーデオン門扉とも呼ばれます。デザイン的な面からガレージ、勝手口に使われることが多いです。片開き・両開き・親子開きがあります。ガレージでの人の出入りが多い場合、親子開きが便利です。
素材はアルミ製が主体です。レールタイプ、ノンレールタイプ、キャスタータイプ、ノンキャスタータイプの製品があります。開口部が広い場合、キャスタータイプ、レールタイプの方が安定性があり耐久性もあるので適しています。車庫の場合、伸縮戸のたたみ幅を考慮して車を出し入れしやすい開口部の幅を設定します。
有効開口幅を広くするため、たたんだ門扉が回転できるものもあります。
道路勾配による敷地の傾斜に対応出来ます。
⑤跳ね上げ戸
ガレージに使われることが多いです。すっきりしたデザインのため近年人気が高まっています。
門扉を跳ね上げてその下をくぐる形式のため車の高さが条件となります。車高が高い場合、ハイルーフタイプの製品を使用しなければなりません。電動式でリモコン操作のものが便利です。
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