【前編】ランドスケープのデザインキーワードを「だんだん」と設定。
斜線制限によって生まれた階段状のボリュームが宮崎の風土にある美しい棚田を連想させ、集客力の高いエリアとの相乗効果によって街全体の活性化を促す、民間と行政が一体となったプロジェクト。
設計事例:宮崎県アミュプラザみやざきの「だんだんテラス」

■建築とランドスケープをネットワークしてデザイン

── まず、デザインネットワーク様の成り立ちや理念についてお聞かせください。

古家:会社自体は私の父が1986年に設立し、ちょうど40周年になります。当時は事務所を一緒に立ち上げた大学の後輩の方が建築を担当され、父がランドスケープをするという体制で、当時としては新しい考え方だったのかもしれません。「建築とランドスケープをネットワーク化してデザインする」というところから始まっていて、それが「デザインネットワーク」という名前の原点です。
父は大学では建築を学び、卒業後、ランドスケープの世界に進みました。当時はランドスケープデザインという言葉はあまり使われておらず、土木設計や造園設計といったくくりで行政の仕事が多かったようです。現在は私が代表となり、建築にまつわるランドスケープをメインで設計しています。私も建築学科出身なので、建築設計事務所からプロジェクトで声をかけていただく理由になっているかもしれません。

── 古家さん自身はどのような経緯でデザインネットワーク(DNA)に入られたのでしょうか。

古家:学生の頃に、建築家がいわゆる「庭」的な提案をすることが増えた時期がありました。その時に、「建築からランドスケープへというベクトルがすでにある」と感じたのです。自分が本当に建築をやっていくのかと考えた時に、「将来的にランドスケープをやりたいのであれば、素直にそちらへ進めばいい」と思いました。父がランドスケープ事務所を30年近く続け、会社としての実績があったという理由もあります。そして、ランドスケープを専門とすることで、建築設計者は競合ではなく協働の関係となります。
「建築がわかるランドスケープアーキテクト」が求められる時代が来ると思い、ランドスケープ設計の世界に飛び込みました。
今の事務所のスタッフの多くも、ランドスケープを専門に学んだわけではありません。それが逆にポジティブに働き、デザインネットワークのランドスケープデザインがもつ独自性につながっていると思います。私たちは、いわゆる本流ではない、アウトサイダー的な視点を大事にしているかもしれません。

── デザインの根本にある思想は、どういったものでしょうか。

古家:造園の中にさらに空間・場所をつくるといいますか、人が活動する場所、憩える場所、人がいる風景をつくりたいと考えています。彫刻的なものや、見るだけの庭も面白いのですが、どちらかというと、人が介在するようなランドスケープをつくりたいですね。
私たちが関わったプロジェクトでは一見すると造形的・アート的に見えるものもありますが、それは人の活動を促す仕掛けとして、「あそこに行ってみたい」とか、「ここでちょっと寝転んでみよう」「この縁で少し休んでみようか」、子供にとっては「ちょっと登ってみよう」といった、活動のきっかけになるようなものをつくりたいという思いからです。また、設計する敷地の範囲は決まっていますが、敷地の中だけに収まらず、外にも波及していくようなものをつくることによって、周りの地域にも賑わいや人の流れが生まれるものにしたいと考えています。

■まちと立体的につないだ“だんだんテラス”

── アミュプラザみやざきの「だんだんテラス」について教えてください。どういった背景でこのプロジェクトが始まったのでしょうか。

古家:もともと宮崎駅前は、あまり賑わっていない場所でした。このアミュプラザみやざきは単体の計画ではなく、JR宮崎駅の西口広場や、その周辺も含めた再整備として位置づけられ、集客力の高い橘通エリアとの相乗効果によって街全体の活性化を促すという目的がありました。宮崎県や宮崎市も駅前広場の再整備に積極的に参画し、民間と行政が一体となったまちづくりが行われたプロジェクトです。建築設計は久米設計が担当し、私たちは1階レベルも少し設計しましたが、基本的には屋上庭園をメインに計画しました。
この建物は斜線制限によって生まれた階段状のボリュームをもっているのですが、それが宮崎の風土にある美しい棚田を連想させるということもあって、ランドスケープのデザインキーワードを「だんだん」と設定しました。「だんだん」には、棚田を表す形態的な「段」という意味のほか、宮崎県の愛称「日本のひなた」が示すような温暖な気候を表す「暖」という意味もかけています。さらに、登っていくと「だんだんと空が近くなっていく」「だんだんと海が見えてくる」という高揚感や期待感も込めています。

6FからRFまである屋上庭園をつなぐ続く路と、レストスペースやイベントスペース・花壇等をレイアウト。

── 上まで人を誘う工夫は、どういったところにありますか。

小さな子どもたちのための遊び場。

古家:小高い山をハイキングするように、「上に何があるんだろう、ちょっと登ってみよう」ということを繰り返す中で、屋上まで人が自然と導かれることを意識して計画しました。エレベーターが表側にはなく、基本的には階段を登るしかありません。そのためにも、各階で何か違う場所、行ってみたくなる場所をつくっていくことにしました。

棚田状に展開するテラスとつづら折りの階段が利用者を上階へと誘う。

6階レベルは、トンネルのある築山や人工芝によって、親子連れも安心して楽しめる遊び場として開放しています。7階はイベントも行える開放的なスペース、植栽に囲まれたスペース、飲食などのテナントがテラスとして利用できるスペースなどが緩やかにつながっていて、階段状の水景が屋上庭園にアクセントを与えています。8階と10階には「オフィステラス」を計画し、屋外ミーティングやリフレッシュスペースとして活用されることで、オフィスの活動が屋上庭園へ自然と滲み出ることを期待しています。9階には南国らしさを演出するアメリカデイゴをシンボルツリーとして植樹し、その周りにベンチや人工芝を設けることで、ゆっくりくつろげる居場所をつくりました。細かいベンチや階段のつくり込みも、だんだんを意識した設計をしています。

(左)水景と緑が、動線空間と滞留空間を緩やかに分ける。
(右)一体的にデザインされた階段とベンチ。

そして屋上階には展望デッキがあり、宮崎の山や海、街並みを一望できます。また屋上階には「交通神社」が設けられていて、これはオーナーであるJR九州のご要望によるもので、博多駅のアミュプラザにも交通神社が設置されています。

オフィスのために設けられたテラス。
宮崎のまちを一望でき、遠くには海が見える最上階の展望デッキ。

■居場所を生み出しまちに開くことで人が集まる

── 実際にオープンし、どのような使われ方がありましたか。

古家:6階から10階の「アミュにわ」、屋上の「アミュそら」と名付けられた屋上庭園には、学校帰りの学生や子連れの親子など、多くの方が思い思いの時間を過ごされるようになりました。女子高生たちが放課後にTikTokの撮影をするなど、想定していなかったような使い方もされていますね。全体としては商業施設ですが、公共性があるというか、公園のように楽しんでいただいています。もともとそうした居場所がこのあたりにはなかったので、施設自体に特に目的がなくても「ちょっとあそこに行こうよ」という、まちに開かれた市民の居場所をつくることができたという感触があります。

公園のように市民に開かれた場所として利用されている

── 床材や植栽は、どのように選んでいかれましたか。

古家:人が歩くところと滞留する場所の舗装はフラットに保ちながら、床の仕上げの使い分けによってさりげなく使い方を示すことを意識しました。例えば人が滞留する場所には木目調のタイルや人工芝とし、歩くところと緩やかに分けています。植栽については、宮崎の環境に適した色とりどりの植物を路沿いに施しています。商業施設ということもあって在来種や外来種が混在する、わりと賑やかな構成にしています。日常的な気軽さがありつつ、楽しく非日常的な場所という両面を、うまく融合させたいと考えました。

上階から見下ろすと「やま館」や商店街 ( あみーろーど ) も取り込んだ、多層的なにぎわいの風景が広がっている。

── メンテナンスについては、いかがでしょう。

古家:どこでもよく話題にあがることですよね。例えば芝生は面をつくるのにイニシャルコスト的に抑えられますが、芝刈りの手入れをどうするかという話になります。タイルなどの舗装材にすれば植物よりはメンテナンスがかかりませんが、今度はイニシャルコストが上がる。メンテナンスとコストのバランスは、常に課題になります。
「アミュプラザみやざき」は竣工から5年ほど経ち、植栽はだいぶ大きくなっていると思います。できた直後にコロナ禍に入ってしまいましたが、今は地元の人たちが集まる定番の場所になっているのは嬉しいですね。

古家俊介(ふるいえ・しゅんすけ)
有限会社デザインネットワーク | DNA
代表取締役

1980年福岡県生まれ。2007年慶應義塾大学大学院 理工学研究科修士課程終了後、2008年有限会社デザインネットワークに勤務、2016年取締役就任。一級建築士。

著者プロフィール

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