1.インテリアが庭計画の鍵
【 はじめに 】
『建物とエクステリアは一体として考えたエクステリア計画(プラン)を行なう』ことが販工店の新しい暮らし方提案になりそれによってお客さまにも喜んでいただくことができる。
今年度、YKKAPはこの提案を徹底いたします。
それに沿って今回から月一回、計6回(6カ月)にわたり、建物からの目線でエクステリアを考え、YKKAP商品を通じて、少しでも、みなさまの提案の強み(差別化)になればうれしく思います。
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ご存じのとおり、外構や庭などのエクステリア計画は、建物のプランから導き出される部分も多いと言えます。
間取りやインテリアを検討しながら同時にエクステリアも考えることで敷地を無駄なく活用でき、室内でも屋外でも両方心地よく過ごすことができる住まいになります。特に建物配置、窓の位置や大きさなどはエクステリアと合わせて検討することでさらに魅力的になる部分です。
住宅エクステリアでは、そこに住まう人の“暮らし心地”が何よりも大切と言えます。
6回の予定です。
(予告なく変更する場合はご了承くださいませ)
1回目は【 インテリアが庭計画の鍵 】
2回目は【 外ごはんの気持ちよさをダイニングで 】
3回目は【 そこは駐車場なのか庭なのか 】
4回目は【 窓と庭の関係 】
5回目は【 キッチンガーデンが料理を楽しくする 】
6回目は【 家と町をつなぐ場所 】
1回目は【 インテリアが庭計画の鍵 】
たとえば、毎日そこで暮らすことをイメージしながら
たとえば、来客が感動する瞬間を想像しながら
たとえば、自宅にこもりがちな家族が季節を感じる喜びを思い浮かべながら
・・・
玄関扉を開けた時に何が見えたらビックリするでしょうか?
リビングへの扉を開けた時に広がる景色はどんなものだったらうれしいでしょうか?
ソファーに座ると目の前に何が見えたらうれしいでしょうか?
来客の席からはどう見えるでしょうか?
建物平面図の中を何度も歩き回ることって、楽しく感じませんか?
ひとつひとつ想像しながら、そこから見える「ソト」を確認していきます。
部屋への扉を開けた時に目に入るものは、その空間全体の印象に大きく影響します。リビングの扉を開けた時、最初に目に飛び込んでくるものがテレビだと、ちょっと残念です。 心地よい空間を作るインテリアと共に、「扉を開けた時のフォーカスポイント」をリビングの窓外に配置すると、視線が庭まで自然と伸びていきます。部屋を飛び出して庭にまで視界が伸びることで、室内は実際よりも拡がりのある空間に感じることができます。
また、視線の伸びた先は「ソト」で、そこには自然があります。
四季があります。
降り注ぐ陽射し、樹々の揺らぎで風を感じさせる光景は空間を豊かにし心地よさへと繋がります。
<リビングの扉を開けた時に視線を引き付けたい部分>
<ソファーで寛ぐときに感じたいソトの気配>
<ダイニングでの食事中に見えるソト>
いろんなところからの視線をチェックして重ね合わせていきます。
すると「扉を開けた時のフォーカスポイント」の位置は自然と絞られていきます。ポイントになるものはどこに配置するのがいいのか。
どこに樹木を植えるのがいいのか。答えが見えてきます。
<フォーカスポイントの位置>
植える樹木は落葉がいいのか常緑がいいのか?それは周囲の環境、道路や隣地からの視線を考慮し全体のバランスを見ながら判断していきます。
陽射しを調整したいところなら落葉樹を、視線を調整したいところなら常緑樹を選ぶのが基本です。
部屋のどこで過ごしていても「ソト」の自然を感じることができるエクステリア計画であることが大切です。繰り返しますが、ソファーに座って見えるのがテレビボードだけでは心地よいインテリアとは言えないのです。
人は五感から常にあらゆる情報を受け取っていて、その中でも視覚から入ってくる情報が一番多いと言われています。見ている景色によって、ゆったりとした気分になったり、楽しくなったり、自然と会話したくなったり、知らずと大きく影響を受けているもの。
我が家で過ごす時に座っている位置は決まってきてしまいます。
そこから見える景色に自然があると、無意識であっても気分は違ってきます。毎日、何を見て過ごすのかは心地よい暮らしをつくる上でとても重要です。
和室ならどうでしょう?
扉を開けた時に見える庭の景色に関してはリビングダイニングと同じです。違いは視線の高さ。畳に座るので視線が下がります。また出入口と床の間の位置を基準に上座と下座が決まっているので、お客様の席から何が見えるのかを一番に考えて計画します。
<入り口からと上座からの視線>
<フォーカスポイントの位置>
フォーカスポイントの位置が庭のボリュームゾーンです。それを中心に全体を計画していきます。
庭は庭で過ごす時だけのものではなく、家の中で過ごす時間の質にも大きな影響を与えています。
何故このエクステリア計画になるのかを説明する事は、庭を整える必要性を知っていただくと同時にそれは、住まい手の納得感・共感を引き上げることにも通じます。
窓の「ソト」を意識するのは、過ごす時間が長く来客も多いリビングダイニングや和室だけではありません。
家の中を移動する時、視線の先に窓があるなら「最初にその窓が視界に入る時」に注目します。例えば玄関から続く廊下の足元に下窓があったなら、玄関から一番遠くに見える部分がフォーカスポイントを置く位置になります。
<フォーカスポイントの位置>
「最初にその窓が視界に入った」その瞬間に視線がぐっと遠くに伸びることで、視界の変化が大きくなり心を動かされます。そこに季節感のある景色が見えたなら毎日のほんの一瞬が、ふっ・・と緩む瞬間になりそうです。
同じような毎日が続く家の中でも、心を動かされる瞬間が多いほど豊かさを感じられるのだと思います。「ソト」の変化で季節の巡りを住まう人に気づいてもらうことができる。そんな設計を心がけたいですね。
心の動きを意識しながらインテリアもエクステリアも計画していきます。
間取りだけでなく部屋を構成する家具の位置も、庭を考える時には大切なことがわかっていただけたのではないでしょうか。
「ソト」を活かすならインテリアのレイアウトはこうあって欲しい、エクステリア計画はこうあってほしい、など、エクステリア専門家としての立場でどんどん提案していきましょう。
住まい手と建築設計士とインテリアコーディネーターと共に、予算や意見を出し合いながらベストな答えを見つけていくことができれば、住まい手にとって一番満足度の高い家づくりになるはずです。
建物とエクステリアは一体として考えたエクステリア計画を行なうことが販工店のみなさまの新しい暮らし方提案になりそれによってお客さまにも喜んでいただくことができればうれしく思います。
ご覧いただきありがとうございます。
著者プロフィール
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個人住宅の庭・外構や店舗のエントランスガーデンなど、あなたのライフスタイルに調和する外空間のデザインするGokansha(ゴカンシャ)代表。
二級建築士、インテリアコーディネーター、二級造園施工管理技士、福祉住環境コーディネーター、園芸療法リーダー二級、ハーブコーディネーターなど様々な資格を持ち、建築士でもあるため住宅目線・エクステリア目線・ガーデン目線、それぞれの記事を発信いたします。
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