非正規雇用6割の衝撃(月刊エクステリア・ワーク)
人材不足を嘆く前に、
本当に若者に希望を与えるような採用にチャレンジしているか?
(「給与実態統計調査)から考える)
月刊エクステリア・ワークの9月号に掲載する特集記事「「第三空間―サードプレイス」の本質を探る!」(予定)の取材を進めていたところ、興味深いデータにたどり着いた。
それは、「平成28年度民間給与実態統計調査」(国税庁)というもの。これによると、平成28年の日本の将来を支える20~24歳の平均年収は258万円であるとのこと。
そして衝撃的なのが、その中で非正規雇用の平均年収は172万円という数字であり、しかもその非正規雇用の割合は全体の6割を超えるということだ。つまり、単純に考えると、6割の若者が今後、例え30~40代の稼ぎ時になっても、正社員と同じような昇給もなく、いつまでも低所得者レベルでいることになるということではないか。
世の中では「断捨離」とか「ミニマル消費」とか、格好良いフレーズが飛び交うが、これではリアルに「貧乏」ということである。「環境意識が高いから車を買わない」という話もあるが、冗談じゃない。昔であれば、若い頃は安月給で、だんたんと昇給していくインフレベースに乗っているから、安心してお金は使えた。給料は前借りして遊んだという武勇伝を、いま団塊世代として引退していくオヤジたちに、何度も聞かされたことを思い出す。
ひるがえって今はどうだ。残り4割の正社員とて、会社自体の先行きが不透明だし、よほどの資産家の息子や、代々続く高学歴家系の限られたご子息くらいしか、楽しい生活は出来ないだろう。一般の人々がこんなに貧乏では、とてもじゃないが車など買えるわけがない。住宅も買えないし、結婚して子供も育てることも不可能な生活保護レベルだ。
これが現在の日本の若者の実情なのだ。
今も電車に乗れば、大都会では通勤するサラリーマンが、昔とは変わらぬ姿で歩いている。繁華街や居酒屋に行けば、たくさんの若者がバブル時代と変わらぬ体でお酒を飲んでいる。高速道路は未だに次々と新規路線が開通し、見たこともないようなピカピカの新車がたくさん走っている。結構、若者もお洒落な格好をして街を闊歩している。表面的には、豊かな社会であるように見える。景気は良いのかもしれない。
しかしその裏では、多くの若者は確実に経済面で虐げられている。その一方で、企業は「人手不足」を言う。このエクステリア業界でも、「人材不足」を嘆く。ましてや、「今の若者はえり好みが激しい」とも言う。ということは、若者にとっては、企業をえり好みできるだけの、たくさんのチャンスと選択肢があふれているはずだ。それなのに、平均年収はなんと258万円・・・・これはいったいどういうことなのだろうか。
答えは明白だ。つまり、言葉は悪いかもしれないが、一部の会社以外には、ろくな会社がないということだろう。会社に入っても自分の将来の発展が見込めないから、辞めてしまうのだ。たとえ就職した会社が好きになれず、人間関係が最悪でも、最低限の賃金ベースがあれば、少しは我慢して働くものだ。守るべきもの、家族のためには、つらい仕事も耐えることはできる。しかしそれも、最低限以上の人間的な生活ができるレベルの賃金があってこその話である。
それを考えると、企業は人材不足を嘆く前に、本気で若者を元気にする術を考えてほしいと思う。最近、私は取材先のエクステリア会社の社長にも、嫌われない程度に、このような話をしている。「本当に若者に希望を与えるような採用にチャレンジしているか?」―これを経営者に語っていくことが、ささやかな人材不足解消への試みだと思うからだ。(S)
著者プロフィール

- 佐倉慎二郎
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佐倉慎二郎 ㈱住宅環境社 代表取締役社長
住宅建材業界、エクステリア分野の専門誌記者・編集者25年。2006年より「月刊エクステリア・ワーク」を発行する㈱住宅環境社入社。2014年に代表取締役社長に就任。現在は住宅と外構・エクステリアを融合する「住宅と庭との一体化設計」と、非住宅分野である商業施設(コントラクト市場)における庭空間の市場開拓を探る「サードプレイス『庭・快適空間』」を発刊。ホテル、レストラン、商業施設などに向けての情報提供や、まちづくり、異業種コラボレーションに向けての提案を行っている。
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