エクステリア専門店の取り組み事例からアンケートを実施する意味を考える。 “当社はこれをアフターメンテナンスと生涯顧客化ビジネスの根幹ととらえている”
エクステリア専門店が導入しているCS対策の中で代表的なものが、「お客様アンケート」の存在だろう。これは、自社の工事が終了して現場を引き渡したのちに、営業マンや職人の対応や、完成した現場の満足度などを聞くというものだ。主に専門店の商談スペースにファイルされて、来店した人が閲覧できるようになっているのをよく目にする。
あるエクステリア専門店では、アンケートを手渡す際には、同時に「引渡し確認書」も手渡している。この引き渡し確認書は、アンケート以上に重要なものだという。その理由は、引き渡したのちに、現場での事故などが起きた場合、その責任の所在を明確になる、という意味合いもある。
アンケートの結果については、良い意見、改善すべきクレームなど、マイナスな意見についても、営業担当と現場職人とが情報共有をする必要がある。特に職人に対しては、お客さんが「とても高い技術で仕事をしてくれた」「挨拶もきちんとして気持ちよかった」など感謝の内容を伝えてあげると、次もレベルの高い仕事をしようという気持ちになってくれる。組織全体でCSを実現するためには、職人がお客様にしっかりと評価されている、ということを示すことが大切だ、というのだ。
つまりアンケートは、「引渡し確認書による責任所在の移転」をするという〝企業のリスクマネージメント〟と、CSを向上させるという二重の効果を両立させるものだというのが、考え方であり、認識だ。
そのエクステリア専門店では、アンケートの実施に当たり一番重要なのが、「回収率」だとして、回収率100%を目指している。自社の営業と職人とでペアを組ませて、アンケートの送付・手渡しと、回収を行っているが、回収班によってはすでに100%を達成している。アンケートの回収率が向上するにつれ、紹介・リピート率も向上し始めてきたという。回収率を高めるためには、配布は郵送よりも手渡しの方が良いという考え方から、可能な限り手渡しの比率も高めていった。
エクステリア専門店の社長は言う。「アンケートなんてどの施工店も実施しているかもしれないが、当社はこれをアフターメンテナンスと生涯顧客化ビジネスの根幹ととらえている。お客様だけでなく、当社の社員にも『どうしてアンケートが必要なのか』という理由を理解してもらい、会社全体でさらに共有させていきたい」と。
アンケート自体は確かに地道な取組みではある。しかし、それを会社の自慢や自己満足に終わらせず、アフターメンテナンスと生涯顧客化ビジネスに向けて、どのような価値を付け加えられるかが、これからのエクステリア専門店の生きる道であると考えられる。
「うちもアンケートをしているが、紹介・リピートには目に見えて繋がるように思えない」と考える経営者は、もう一度、「何のためのアンケートか」という原点を考えてみてはいかがだろうか。
著者プロフィール
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佐倉慎二郎 ㈱住宅環境社 代表取締役社長
住宅建材業界、エクステリア分野の専門誌記者・編集者25年。2006年より「月刊エクステリア・ワーク」を発行する㈱住宅環境社入社。2014年に代表取締役社長に就任。現在は住宅と外構・エクステリアを融合する「住宅と庭との一体化設計」と、非住宅分野である商業施設(コントラクト市場)における庭空間の市場開拓を探る「サードプレイス『庭・快適空間』」を発刊。ホテル、レストラン、商業施設などに向けての情報提供や、まちづくり、異業種コラボレーションに向けての提案を行っている。
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