エクステリア業界自らが、行政・自治体を動かし、まちづくりを支援しながらエクステリアの重要性の認知工場を図る。【埼玉県の地域活性化プロジェクト”GOOD PARK”の事例】
1.町とエクステリア事業者の有志連携から始まった官民連携プロジェクト
2020年10月16日~2021年2月28日の期間、埼玉県寄居町に、遊休地(道路拡幅と広場整備予定地=町有地)を利用した期間限定の可変式・可動式広場「GOOD PARK」という町民憩いの場が登場。期間中、主にイベント広場として累計約405人が利用した。
この「GOOD PARK」は、町と造園、園芸、エクステリア事業者ら民間の有志10社で連携した官民連携のプロジェクトであり、エクステリア業界からは埼玉県大里町のエクステリア専門店・ジェイムズ㈱(森田淳一社長)とエクステリア問屋の群峰アクシア㈱(町田浩康社長)が中心メンバーとして参画。メンバーは各々連携し、プロならではの資材調達、植栽調達、緑化、パレットを積んだベンチ、農業用のカゴを活用した可変式テーブルなどを使い、期間限定の公園を作った。
この取り組みは、埼玉県が主催する、空き店舗や空き地等を活かした地域活性化事例のコンペティションである「2020年度まちなかリノベ賞」の奨励賞を受賞。さらに今年4月からは消防署跡地を利用した「GOOD PARK」第二弾がスタートしている(2022年3月まで開放する予定)。町民憩いの場としての利用の他、広場内のスペースや店舗型ユニットハウスをイベントや商品販売などに貸し出し、まちの賑わいを創出することがプロジェクトの狙いだ。
2.やる気のある自治体担当者への提案プレイヤーになったことが成功のポイント
森田社長が提案した当初は、「エクステリアって何?」という感じで、行政は一歩引いた印象があったという。同時に現在のまちづくりにおける、行政・自治体と民間との関係性の課題も体験した。「様々な行政・自治体の会議に出席して一番感じてきたことは、『プレイヤー不在』です。やる気のある担当者は結構いるのですが、具体的な提案をして来てくれるプレイヤーがいないことが悩みなのです。そこで我々がプレイヤーとなり、やる気のある行政・自治体の担当者が1人でも付いてくれれば、提案も通りやすく、物事が進めやすいことが分かりました。そのマッチングがうまく機能したのが、今回のGOOD PARKでした」(森田社長)。
行政の立場では、自ら変わったことや新しいことを仕掛けることはなかなか出来ない。したがって、まちづくりに対して主体的に動いてくれるプレイヤーがいなければ、自ずと無難なものを作ってしまいがちになる。例えば何の変哲もないモニュメントや、単にスペースを埋めるための植栽やベンチといった、ハード中心のデザインなき光景が象徴的だ。
寄居町の中心市街地活性化事業も、このままで行けばそうなりかねない。ましてや事業は実際に地域住民にあまり認知されていない状況でもあった。 そこで森田社長は、GOOD PARKの創出は事業の認知向上になり、同時に単なるハード中心の駅前開発ではなく、住民の集いの場が出来ることが、行政のPR効果にも繋がるという効能や意義を地道に説いた。
3.ネットワークを築き、エクステリア業界の重要性を認知させられれば、行政をも動かすことが出来る
「『人々がたたずむ場所が出来る』『こんな風に駅前が変わる』『事業をPRする看板の設置・告知』など、様々な具体的な提案をしていった結果、無料で遊休地を提供してもらえることになりました。エクステリア業界の重要性が行政にも認知された、という手応えを感じました」(森田社長)。
一方、森田部長も今回の経験から、「我々エクステリア業界でも行政を動かせることが分かりました。同時に業種や企業単独ではなく、様々な分野のスペシャリストと関係性を築き、ネットワークを作っていくことも行政を動かすポイントだと思いました。とても良い成功事例を示せたと確信しています」と語る。
著者プロフィール
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佐倉慎二郎 ㈱住宅環境社 代表取締役社長
住宅建材業界、エクステリア分野の専門誌記者・編集者25年。2006年より「月刊エクステリア・ワーク」を発行する㈱住宅環境社入社。2014年に代表取締役社長に就任。現在は住宅と外構・エクステリアを融合する「住宅と庭との一体化設計」と、非住宅分野である商業施設(コントラクト市場)における庭空間の市場開拓を探る「サードプレイス『庭・快適空間』」を発刊。ホテル、レストラン、商業施設などに向けての情報提供や、まちづくり、異業種コラボレーションに向けての提案を行っている。
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