オープンスペースである駐車場を活かし、植栽の照明やファニチャーで演出された「一夜限り」の空間が、エクステリア関係者や出店者にも想像できない感動を訴えかけた。 【”人の時を想う”企業理念を訴求する日本たばこ産業が熊谷市イベントに出店】

埼玉県熊谷市にて毎月第二土曜日に開催されている「星川夜市」の第29回目が昨年12月11日、市の中心市街地を流れる星川沿いにて開催された。同イベントには市内外から飲食や雑貨などの出店、ステージパフォーマンス、イベント企画などが行われ、多数の人々が集まって賑わいを見せている。

”人の時を想う”企業理念を訴求する日本たばこ産業が熊谷市イベントに出店

今回、賑やかな出店の一角に、普段は駐車場として使われている場所にガーデンエリアが出現した。出店者の日本たばこ産業㈱(JT)熊谷支店が、「居心地の良い空間」をテーマに建築士、ガーデンデザイナー等の専門家に「吸わない人も寛げる場所にしたい」とのコンセプトで空間デザインを依頼。ファンスタイル一級建築士事務所・森智弘氏が監修、ガーデンデザイナーである花音の森代表・堀久恵氏((一社)日本ガーデンセラピー協会専門講師)がトラック3台分の樹木や花苗を植栽。来場者に休憩場所を提供する社会実験として「一夜限りのパブリックガーデン」を演出した。そしてガーデンファニチャー等のエクステリア商品の調達や会場設営は夜市スタッフとして群峰アクシア㈱の森田誠吾部長が担当した。

人の時を想う企業理念を訴求する日本たばこ産業が熊谷市イベントに出店

人気のない片隅で吸わない人からは近寄りたくない従来の喫煙所のイメージを一新し、多くの人が寛げる場所にすることがコンセプト。出店者であるJTのシニアトレードマーケター・戸坂仁氏は昨年、熊谷市のワークショップで森氏と出会い〝人の時を想う〟との会社理念に適う場所を作りたいと相談すると、「屋外でテーブルと椅子を設置してコロナ禍でも人と一緒にご飯を食べられる公園のような寛げる空間を創る」ことで共感し企画が進んだ。

空間は常設ではなく〝一夜限り〟のために苦労も多数あった。設営は午後2時に開始し夜市のスタート時間の5時に間に合わせる必要がある。またコンクリート上の何もない地面に一から空間を作り、終了後は原状回復(更地)して撤収しなければならない。そうした時間成約がある中で、植栽とライティングで彩られ、快適なガーデンファニチャーのある心地よい空間が出来上がった。

森氏はこれまで住宅のエクステリアは豊富に手掛けてきたが、このようなオープンスペースでの空間づくりは初めての体験であったという。「人がたくさん来て『きれいな場所ですね』と言ってもらえたことに感動しました」(森氏)。

そしてガーデンデザインを行った堀氏は、森さんが手掛ける住宅の施主であるという繋がりがあった。森氏は堀氏にガーデンデザインを依頼すると、堀氏経由で群峰アクシアの森田氏をはじめ寄居GOODPARKの運営スタッフとも繋がった。結果としてエクステリアの関連業界で思い持った人たちが、大きな縁で繋がった。

普段はエクステリア営業が本業の森田氏は「緑の効能やガーデンファニチャーはとても魅力的であることを一般の方にたくさん知って頂ける機会にもなったのではないか」と成果を語る。JTの戸坂氏は「一日で撤収するのはもったいないほど凄い場所になった。我々では想像できない感覚や感情に訴えかけるようなこうした空間を、作れるプロがいるんだということを感じた」と話してくれた。

今回の事例はまだまだエクステリア業界としてのメインビジネスには遠いかもしれないが、業界ができる地域貢献や一般消費者への大きなアピールとなることは間違いない。ほかの地域においても、様々なパブリックスペースにてこのような展開が出来ていけば、日本の街づくりを大いに活性化させるのではないか。

著者プロフィール

株式会社住宅環境社
株式会社住宅環境社佐倉慎二郎
佐倉慎二郎 ㈱住宅環境社 代表取締役社長
住宅建材業界、エクステリア分野の専門誌記者・編集者25年。2006年より「月刊エクステリア・ワーク」を発行する㈱住宅環境社入社。2014年に代表取締役社長に就任。現在は住宅と外構・エクステリアを融合する「住宅と庭との一体化設計」と、非住宅分野である商業施設(コントラクト市場)における庭空間の市場開拓を探る「サードプレイス『庭・快適空間』」を発刊。ホテル、レストラン、商業施設などに向けての情報提供や、まちづくり、異業種コラボレーションに向けての提案を行っている。