新しい街路デザインを変える「マイクロモビリティ」は、エクステリア需要の発掘も期待される。
最近、街中の空地に『電動キックボード』のポートが設置される事例が増えてきている。シェアサイクルはかなり普及してきているが、キックボードを乗りこなす人はまだ少なく、とりわけ高齢者層には少しハードルは高い気がする。しかし、このキックボードが今後、「マイクロモビリティ」(超小型モビリティ)の旗手として、さらに各エリアで普及が進んでいきそうな状況だ。
マイクロモビリティ(超小型モビリティ)とは、自動車よりコンパクトで小回りが利き、環境性能に優れ、地域の手軽な移動の足となる1人~2人乗り程度の電動車両のことをいう。導入の経緯としては、 2010年に国土交通省が「マイクロモビリティの利活用に関する実証実験」を開始し、ガイドライン公表や認定制度の創設、導入の補助や保安基準の改正などを推し進めてきた。
国交省によるマイクロモビリティの種別は、「第一種原動機付自転車」、「軽自動車(型式指定車)」、「軽自動車(認定車)」の3種ある。このうち、いわゆる〝原付〟は原付免許の取得が必要で、かつ法定速度60キロ以下でヘルメット着用が義務付けられている。
一方、『電動キックボード』は、現行法では、この〝原付〟と同等のルールが適用されている。しかしながら、2022年3月に閣議決定された道路交通法改正案では、新たに「特定小型原付き自転車」としてカテゴライズされたことで、その存在はさらに身近なものとなりそうである。
具体的な改正案としては、「最高時速20キロ以下」のため、運転免許は不要(16歳未満は運転禁止)。ヘルメットも装着不要―といった内容での検討が行われことになっている。つまり『電動キックボード』は〝原付〟の一種であるが、それよりも規制が緩い存在として位置づけられていることになりそうだ。
マイクロモビリティ普及が進む背景には、地球規模で普及しているカーボンニュートラル思想、さらには国が推進する「МaaS」(Mobility as a Service)、そしてシェアリングエコノミーの拡大といったことがある。
一方で、日本ではそれらの普及を阻む要素がたくさん存在する。まず道路が狭く、段差も多い。車道と歩道の規格もバラバラで、自転車専用道路がほぼ存在していない。スムースな移動と、車や人との衝突を避けるための安全性の確保も大きな課題である。
普及の第一歩としては、まずは特定居住区や特定街区での運用が有効であろう。例えば、広大な工業団地内での移動や、新たに開発される商業施設(ショッピングモールやアウトレットモールなど複合商業施設)の敷地内での移動での普及が期待される。とりわけ、都市や公園の再開発に伴う道路計画では、「МaaS」にマイクロモビリティを連動させた運用により、新たな集客手段も見込まれる。
マイクロモビリティの普及は都市の建築物とその周辺の空地、〝人〟の快適な移動を実現させるための道路計画に大きな変革をもたらすことになる。環境問題と安全・安心を組み込んだ新しい街路デザインにより、その周辺のエクステリア需要の発掘も可能であると考えられる。
著者プロフィール
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佐倉慎二郎 ㈱住宅環境社 代表取締役社長
住宅建材業界、エクステリア分野の専門誌記者・編集者25年。2006年より「月刊エクステリア・ワーク」を発行する㈱住宅環境社入社。2014年に代表取締役社長に就任。現在は住宅と外構・エクステリアを融合する「住宅と庭との一体化設計」と、非住宅分野である商業施設(コントラクト市場)における庭空間の市場開拓を探る「サードプレイス『庭・快適空間』」を発刊。ホテル、レストラン、商業施設などに向けての情報提供や、まちづくり、異業種コラボレーションに向けての提案を行っている。
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