【前編】まちづくり設計に於ける外構のポジションと求める商品の機能や評価の要素とは?
Q1.まちづくりと街並みの形成は外構工事ととても関連があります。外構が景観を作り出すといってもよいように思います。どのようにつくられ、配置されていくのか、そういったところを教えてください。
私は、規模が50戸~100戸前後の分譲住宅地を設計する仕事が多く、今はつくば辺りが多いです。事業者は大手のハウスメーカーで、何社かの協同です。区画割り計画からスタートするケースもありますし、コンセプトをつくったりもします。今は建物の値段が高いので、建売りで建てないでモデル住宅くらいで建てて、注文をとります。そうするとルールがないとなかなか厳しいので、ガイドラインや景観協定というルールをつくります。その中にここの街だと、門柱のタイプをこれから選んでくださいということを入れる。最近では、YKKAPの門柱が割と良かったので、そこからモダンなウッド調のものを指定し、選んでもらうようにしました。
YKKAPは、エクステリアの商品開発にとても力を入れています。金額も比較的安く出ていので使われるケースが多い。また、デザインも良くなっています。他にはないようなものもあります。もう少し前だと、結構、オリジナルの特注を受けてもらっていました。割と良く使っていました。最近は、カタログがすごく厚くなっています。
私は住宅地を設計するので、ゴミ置場や外周、フェンスなど、公共的な部分でも使います。
個人ですと使い方を分かって使っているので、自分のものだと言う意識もあり大事にしますが、公共系のものだと耐久性が重視されます。
大規模クリニックでは、開発認可を受ける広さ3,000㎡程度の診療所で、ゲート、門フェンスなど外構工事もいろいろ設計しました。
Q2.外構商品の素材として金物、特にアルミなどはどうでしょうか。YKKAPはアルミ製品も多いですが。
アルミは結局、オーダーがアルミ形材で中が中空になっていますので、特注、オリジナルがつくりにくい材料です。しかし部材を組み合わせることはできます。最近は会社の中で品質を保つためになかなか独自の組み立てはしにくい状況になっています。クレームがあった時に、一部加工してあるとそれでダメとか、製品の保証ができなくなってしまうからです。商品としてはオリジナリティーを求められているのに、製品としてはなかなか組み合わせができない状況にあります。アルミ鋳造であれば、パーツをつくって組み合わせるものも増えています。最近はだいたい中国で安くつくってくるものが多いです。
スチールは、完全にオリジナルです。建築家は外回りにスチールを使う方が多いです。スチール部材を溶接して使っていくので、オリジナリティーはあります。私もメーカーによく言うのですが、スチールみたいなデザイン性とか、あと形材は軽いという感じがどうしてもあるので、それをいかに重くみせるかとか、アルミの素材の仕上げはどうしてもつるつるしていますので、それを質感があるように見せるとか。そういった商品ができないかと、いつも言うのですけれど、いつもコストが上がると言われます。
Q3.まちづくりするときに、外構のポジションというのは街並みの重要な構成要素ではないかと思いますが。
住宅地などは道路を曲げたり変化を持たせたり、なるべく素材とか、車があまり入り込まないなどで歩行者空間を楽しませるような空間をつくります。まちづくりは、建築の周りの部分をどう作るかで評価が大きく変わります。最近は結構オープン外構になっていますので、どうしても建築が目立ってしまい、建築の外観を重視していろいろデザインすることになります。よく隈研吾さんなどが建築物に木をつけたりしています。街並みとしては、敷地の領域性ということで、道路と敷地の間の部分をどうつくるのか、どう見せるのかというので、街並みが変わってきます。今までは、植栽がメインで高木や生垣等で、緑がある程度あることで、潤いをもたらす効果がありましたが、最近の住宅地は若い層が緑をあまりわからない、知らない、虫が嫌だ、管理が大変という理由で植栽を設けなくなってきています。でも、緑から受ける恩恵はいろいろあるので、植栽数が少なくても緑は大事にしてほしいです。建築物とか、工作物は出来た時がピークでその後はどんどん劣化しますが、緑は熟成していくので、きちんとメンテナンスができれば良いと思っています。なので、緑と建築、緑と工作物を組み合わせることによって、建物や工作物が引き立つと思います。私は土留めの手前のところに地被類植栽を設けて、緑で締めるということをいつも考えて設計しています。背景の緑、材料の後ろを緑とか、そういうところを大事にしています。それはマンションや商業施設も同じで、ガーデンみたいなところにカフェがあったりするのが増えています。そういう傾向かなと思います。
Q4.古い街並みを見て影響を受け、アイデアが出たりするのでしょうか。京都にある桂坂の住宅地開発を行っていましたね。
桂坂は新しい京都のお屋敷街がコンセプトなので、京都の古い市街地をデザイン・サーベイ(建築物を設計する際に、建築予定地の周辺地域の街並みや歴史などを調査すること)して、そこからエッセンスを引き出しています。ただ昔の家には住めないので、メンテナンスや防火のため、木を完全に使えない部分がありますが、デザイン的な要素として、格子とか色合いとか使えるものはいくらでもあります。最近は古民家を再生したりして、古くていいものは今欲しいと思っても新しくはつくれないので、似た物をつくるのはできるけれど、古いものの価値というものは大事であるので、古いものと新しいものをうまく調和させるというのもひとつの方法だと思います。
写真は、内藤廣が設計した京都の「虎屋菓寮 京都一条店」で、私が好きな建築家です。木とコンクリートを使って、半戸外空間をつくっています。ランドスケープと建築が一体となっています。隈研吾の美術館、根津美術館に似ています。
伊藤豊雄の岐阜の図書館、情報センター、「みんなの森」、これも大胆に木を使っています。
【虎屋菓寮 京都一条店(設計 内藤廣)】
私が最近計画したつくばの「みどりの」という駅のそばですが、「めばえヴィレッジ」という60戸くらいで、雑木の中に住まうという里庭をコンセプトにしています。枕木を使い、街区の真中に大きな共有地を設けて、そこに雑木を沢山植え、クラブハウスもあります。別荘地のコンパクト版のような環境で、境界杭はありますが境界塀はないという、隣のお宅の木も借景で見えるというコンセプトの街です。ごみ置き場もウッド調です。
Q5.ゴミ置場だとかも含めて外構ですよね。
そうです。だから物置もガイドラインがあって、なるべくウッド調にしてほしいとか、色も落ち着いた色にしてほしいとかお願いしてあります。
みどりの駅の反対側にウエストというのがありますが、これは集会所です。ここは門柱が構造材はアルミですが木貼りとなっています。いろいろ選択はできますが、完全な木もあり、木樹脂板も選択できます。完全な木でもすぐには腐りませんが、3年くらいすると色があせてくるので、塗装するのも楽しみにするという暮らしを提案しました。最近はメンテナンスフリーを求めてくるのですが、何でもメンテナンスフリーじゃない、メンテナンスをする楽しみを生活に位置付けたいです。わざわざジムとかキャンプに行かなくても、こういうアウトドアでの作業をすることが、楽しみということを広げていきたいです。草刈りも結構無心になれ、達成感もあります。メンテナンスの作業も楽しみだよということで伝えていきたいです。そういう商品ができるといいなと思います。ただアルミメーカーさんはメンテナンスフリーしか考えていないんですけれど。やはりそこを変えていかないと、アルミだけですと限界があります。
集会所をクラブハウスのようにして、ライブラリーをつくったり、住民サービスを提供したりしています。周りに菜園をつくって一緒に作業する、そういう生活を売っていく、システムを売っていく。
吹付け材の門柱はどうしても劣化します。苔が生え、塗り替えないといけないです。昔の住宅ですと、10年か15年すると外壁を塗り替えるのですが、それと同じ作業をこの門柱でしないといけないとなると結構大変なので、みんなそのままになっています。とても見栄えが良くないので、先ほどの話と逆行していますが、木は簡単に塗れるからいいですが、門柱を塗るのは大変なので、メンテナンスが簡単にできるような材料とし、簡単にできないような材料は使わないようにしています。タイル張りとか石張りにしてメンテナンスが楽で、時間とともに見栄えがするような材料を使います。
【ソシエルみどりの】木製、自然石の門柱。里山がコンセプト。
つくばみらい市の「フューチャーコートみらい平」の大型フェンスです。斜めから見ると分かるのですが、もっと奥行きのあるほうがあまり見えないので、納得はしていないのですが、安かったので使いました。
街区の外周はフェンスで囲いクローズドで、街区の中はオープンです。ハウスメーカー8社の協働事業で少し地元業者も参加しています。
【フューチャーコートみらい平】ゲーテッドコミュニティ 街区外周のフェンス
Q6.外構商品の性能、評価というとどういうことになりますか?例えばフェンスや門、性能として何が要求されますか。耐久性は当然ありますが。
カーポートなどは屋根の防火、不燃など製品の法的基準な部分があるので、メーカーはそういう基準はクリアしているのですが、商品というより、使う側の問題なのですが、カーポートが建築物と思っている人は殆どいません。外構業者は、知ってはいますけれど、やっぱり建築物という意識が低いです。エクステリア業界で最大の問題は、コンプライアンスですね。本当に低いですが、ダメだと分かっていても法規制を無視する人もいます。カーポートは建築物なので、屋根が10㎡を超えると確認申請を出さなくてはならないのですが、基本的にだいたい10㎡を超えます。そうするとお客様に、確認申請が必要ですけれど、申請だけで10万円くらいかかってしまうのですがやりますかと聞いて、そうするとお客さんはそれだったら申請は出さなくていいといいます。そのためお客さん承諾の上に確認申請を出さないということです。確認申請を知らないケースの方がもっと多いと思います。そういう面で、建築基準法とか、街にあるそれぞれのルールとか、そういった意識が本当に低いのです。そこが一番、この業界の問題と言ってきていますが、業界のタブーとして扱われています。メーカーさんはコンプライアンスが厳しい一流企業なので、一応外構業者に伝えてはいますがメーカーは施工をしないので、でも施工店は無視してやっています。大手ハウスメーカーは最初に建てる時は、一緒にまとめてカーポートつくる場合は正確に建ペイ率、容積率を算出して確認申請しています。最近は敷地が狭いので、建ペイ率、容積率がオーバーしているケースが多いです。特に2台カーポートを設ける場合は、建蔽率の緩和がある角地以外、だいたい建蔽率をオーバーしています。その建物を売却する時に、次に買う人がキャッシュであればいいのですが、ローンを組んで買う時に、違反ということで銀行ローン審査がおりなくなります。そのため、カーポートだけを壊して売ることになります。
Q7.門柱やフェンスの施工性についてどうでしょう?
フェンスはそんなに施工は難しくはないですが、門柱はアルミの形材を組合わせるケースが多いので、意外と大変だと思います。でも、メーカーはいかに施工しやすいかを常に施工店から求められているので、そこは努力していると思います。
Q8.オープン外構、フェンス、ゲートについて。
建物が欧米のように掃き出し窓が無く、窓が小さければ、オープンでも良いのですが、日本の場合は掃き出し開口部が多いので、領域性の明確化、目隠しが欲しいという需要が、増えています。プライバシーを守るためや防犯性を高める効果もあります。地区計画の制限で目隠しができないが、目隠しフェンスを設けたいがどうしたらいいのか、という問い合わせがあります。今の住宅は開口部が小さくて、コートハウスみたいに、外から中があまり見えにくく、開いています。ところが、目隠しをする住宅では、外から見るとどこに庭があるのかわからないけど、敷地の真中に自分たちの中庭があります。昔の主庭、日当たりなどで庭をつくるのではなくて、プライベート空間を重視した庭が増えているのだと思います。
Q9.シャッターにしても、フェンスにしても、駆動性がスムーズじゃないのがありますが
シャッターは大変だと思いますけれど、フェンスはそれほど難しくはないと思います。最近は金物を組立てていくケースもあります。それは結構大変そうだと思います。何年か前に新浦安のバス停の屋根と柱をうまく調和されたバス停がありましたが、それはウッド調のシンプルなデザインで好評だったですが、工事をみていたら本当に大変そうで、よく間違えないなと思いました。
Q10.郵便受けの回収方法
北日本、金沢や富山にいくと建物に郵便受けがついています。それは冬が寒いためです。家から出ないように外側に門柱がないのです。関東ではよっぽど都市型で敷地が狭ければ建物に郵便受けを付けますが、普通はないです。最近は、宅配ボックスが増えて、8割くらいは設置しています。ミサワホームは、建物に組み込んだ宅配ボックスをつくっています
Q11.それはいいなと思った点は?
ひとつは、コンセプトが里山だったので木質感があったところです。あとは、デザインのモダンさと照明です。今は、照明がLEDになったことで何でもできてしまいます。昔は、門柱の上や壁に照明がついていましたが、今は、隙間に細い照明がつけるなど、いくらでも加工してつけられるので、それも含めて門柱のデザイン化がしやすいです。照明は夜のまちの演出が大きくて、私が提案するところは、門灯以外にあと2灯、スポットライトやガーデンライトを設けて下さいとしてますい。そうすると防犯上も良いし、夜の街並みが演出できます。YKKAPさんのこのシリーズはいいなと思いました。ネットでみて選んでいます。
インタビュー
浅川 潔(あさかわ・きよし)
有限会社コミュニティデザイン代表。1960年生、山梨県甲府市出身。
大学卒業後、不動産会社(分譲住宅設計)、設計コンサルタント会社(都市計画、住宅地計画、街並み計画・設計等)、情景計画研究所時に「佐倉そめい野」に関わり、その後2002年独立後も継続。
住宅地の基本計画・まちなみ計画・設計、まちの運営サポート、街並みガイドライン・景観協定策定等をおこなう、まちづくりプランナー。まち歩きが大好きで、全国の歴史的街並みから分譲住宅地まで相当数を見ています。
代表的な住宅地として、グリーンタウン高尾、東急あすみが丘、京都桂坂、佐倉そめい野、ソシエルみどりの、めばえの街ヴィレッジ、みなみ野結びのまち、リファージュ高坂、などに関わる。
共著:近代エクステリアの歴史(第3章郊外住宅地の変遷)、戸建タウンハウス。
明海大学非常勤講師(まちづくり演習)、E&Gアカデミー講師(街並み講座、分譲地演習担当)
浦安市景観審議会委員、千葉市・浦安市・船橋市・新潟市まちづくりアドバイザー。
著者プロフィール
最新の投稿
- ビルガーデンエクステリア2024.10.29【後編】未来のために、あえて作り込みすぎず余白を残す設計思想「余白のデザイン」を提唱。
【設計事例:角野栄子児童文学館(魔法の文化館)】 - ビルガーデンエクステリア2024.09.25【前編】「芝生のグリーンマウンド」や、安全・安心な歩行者空間など、敷地内外の新たな繋ぎ方をランドスケープから提案
【設計事例:愛知学院大学名城公園キャンパス】 - ビルガーデンエクステリア2024.08.27【後編】物流施設に、ランドスケープというアメニティをデザイン。 「TOWN STATION」や「TOWN AVENUE」、「TOWN PARK」などで繋ぐことで、地域に根差した設計事例紹介。
- ビルガーデンエクステリア2024.07.23【前編】清水建設の設計・施工案件に関わり、ランドスケープからインテリアまで一体でデザインした設計事例紹介。