現在のエクステリア業界はまったく儲からない!?

先日、業界の中でも有名なエクステリア工事店であり、業務管理システムやweb集客の仕組みも構築して経営も順調と聞こえた地元ではしっかりと根付いている経営者の本音を窺い知る出来事を今回は紹介する。

その工事店の経営者が言ったのは、

「現在のエクステリア業界はまったく儲からない、こんなことはあと10年も続かない、20年後に、自分の子供には会社を継がせられない、会社は一代で終わり、時機を見て会社を売りたい・・・」と想像とはちょっと違った驚いたお話しであった。

さらに話は続きエンドユーザー受注の比率が7割を超えてはいるが、その実、細かい仕事やクレームも多く、売り上げの計算が立たないので、常に“集客し続けなければいけない”という強迫観念に駆られるというのだ。また、今の業界がしきりと〝脱・下請け〟をうたっていることにも批判的な考えであった。「ハウスメーカーの新築物件の量にはかなわないわけです。計算できるし、クレームも少ない。でも最近は新築物件の依頼は来ないし、来ても相見積もりで価格も厳しい。だからエンドユーザー受注に走らざるを得ないのです」には、わたしも複雑な現実も改めて知った思いだった。

次に、こんどは逆に、ご自分がエンドユーザーの立場になってリフォームを依頼するならば、どうするかと聞いてみた。すると間を置かず、「それは絶対ブランドでしょう。

『○○エクステリア』よりも、三井とか住友とか、ブランドがある会社に頼めば安心です」とハウスメーカーに依頼するのではないかとの意見だった。

最後に、「エクステリア会社も、ホームページだけを見ると表向き、立派に見える会社が増えたが、いずれにしても、自社職人がいない会社の場合は実際は単なる営業会社であり、施工はおろか設計までも外注するところもある。こんな時代は、どう考えても、続かないでしょう。なぜなら受注したって工事する人がいない。それでも受注しないと食っていけない。だから、これからはもっと営業会社同士で職人の奪い合いみたいなことになる」(前出の経営者)といった声は説得力をもって耳に残った。

今回、この出来事で私が思ったのは次のことである。

エクステリア業界は現在、夢を持った若い経営者も多く、エクステリア業界が魅力的な市場であることを示す根拠として、新築住宅の着工戸数が減少し続けてきた過去20年間でも、業界の市場規模は2000億円を依然として、キープしている事実がある。

もっと、そこを掘り下げて見ると、

省施工をメインとするメーカーが供給する商品の「取り付け業」となっている工事店がある一方で、カスタムオーダーによる建築家ネットワークや空間デザイン提案が得意な造園業など、業界外の人たちがエクステリア業界外の商品や素材を使って特定の顧客層を持っている高額物件の市場も存在している。

実は、そんな状況こそ、今回ご紹介したエクステリア業界の経営者の漠然とした不安の正体ではないだろうか。

このエクステリア工事店の経営者の見解は、決して少数派ではないと考えている。そして表向きは順調な経営をしているように見える会社こそ、様々な課題を抱えている。

「会社を手放したい」と思うのは少し気が早すぎるにしても、その前に、まだまだ良くなる可能性もたくさんあるはずである。経営者の危機感が強すぎてもいけない。

大手に負けない、エンドユーザー対応の会社にすることの努力もできるはずだ。

優秀な経営者ほど、自社の魅力に気づかない場合も多い。この機会に、

各社、いま一度、自社の事業目的・存在意義や経営理念などを再考してみてはいかがだろうか。

著者プロフィール

株式会社住宅環境社
株式会社住宅環境社佐倉慎二郎
佐倉慎二郎 ㈱住宅環境社 代表取締役社長
住宅建材業界、エクステリア分野の専門誌記者・編集者25年。2006年より「月刊エクステリア・ワーク」を発行する㈱住宅環境社入社。2014年に代表取締役社長に就任。現在は住宅と外構・エクステリアを融合する「住宅と庭との一体化設計」と、非住宅分野である商業施設(コントラクト市場)における庭空間の市場開拓を探る「サードプレイス『庭・快適空間』」を発刊。ホテル、レストラン、商業施設などに向けての情報提供や、まちづくり、異業種コラボレーションに向けての提案を行っている。

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