宅配便の再配送問題
宅配便の再配送が問題になっていて月刊エクステリア・ワークの4月号でもこの問題を取り上げた。今回はその記事の要約版を紹介する。
まず、宅配サービス業者は大小約600万社あるといわれ、取扱い量はヤマト、佐川、ペリカン便など大手5社を含めた主要14社がしのぎを削っている。
最新の国交省の調査では、平成27年度の宅配便取扱個数は37億4493万個。このうち約20%が再配達で、これが宅配業者の大きな負担になっている。また配達員の待遇も問題で、一般の会社員の平均所得が484万円に対して、配達員の賃金は388万円と低い。さらに多い人で1日300件も配達しなければならぬほど過酷な労働であり、これでは行き詰まることは間違いない。
さて、エクステリア業界の対応はどうだろうか。現在、多くのエクステリアメーカーで既に商品ラインナップとして「宅配ポスト」を投入している。しかしエンドユーザーの悩みに対して全面的な解決を提示しているのかというと、まだその歩みは始まったばかりと言える。そうした中で集合住宅やマンションのポストで実績のある㈱ナスタが、新しく戸建住宅用ポスト宅配ボックスを開発した。これは日本郵便㈱と大和ハウス工業㈱と連携し普及を目指すもので、同社の笹川社長によると、再配達は「メール便」、「宅配便」、「書留」の3つに分れ、この3つを全てクリアするために現在、ハウスメーカーやビルダーとの提携を進めている。同社では今後、この商品をエクステリア業界でも戸建て市場を中心に浸透を図っていくという方針のようだ。
メーカーでも自宅で留守中に受け取れる「宅配ボックス」新商品をこのほど発表した。
これは郵便受けと一体化し、戸建て住宅の門柱などに設置するタイプ。希望小売価格は10万円~で、通常のポストと比較すると高額と言えるのが特徴だ。しかし「金額」については既に宅配ポストに将来性を見込んでいるとあるエクステリア販工店によると、「ポストで10万円以上取れるなんて宅配ポストの付加価値は高い。価格を下げずに頑張って売る」と強調している。
その一方で住宅メーカーでは、外付けの機能門柱ではなく、家の躯体にビルトインさせるタイプを開発した企業も出始めた。これがメインとなると、さらに建物の機能が進化することになり、エクステリア業界の出る幕はなくなる可能性もあり、住宅ファサードをめぐる攻防が一層過熱するかに注目が集まるだろう。
エクステリア業界としては宅配便問題をソリューション市場とみなしてチャンスに変えたい。大型の宅配便には物置メーカーのノウハウも必要になるかもしれない。デザインと機能を融合した新商品の登場にも期待したいです。
著者プロフィール
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佐倉慎二郎 ㈱住宅環境社 代表取締役社長
住宅建材業界、エクステリア分野の専門誌記者・編集者25年。2006年より「月刊エクステリア・ワーク」を発行する㈱住宅環境社入社。2014年に代表取締役社長に就任。現在は住宅と外構・エクステリアを融合する「住宅と庭との一体化設計」と、非住宅分野である商業施設(コントラクト市場)における庭空間の市場開拓を探る「サードプレイス『庭・快適空間』」を発刊。ホテル、レストラン、商業施設などに向けての情報提供や、まちづくり、異業種コラボレーションに向けての提案を行っている。
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