急成長のベトナムと日本の職人不足は大いに関係がある。
先般、エクステリア業界の団体の研修でベトナムの首都ホーチミンへ行く機会があった。ホーチミンは現在、開発が急ピッチで進んでいて、高速道路と高層ビル建築が同時に進行していた。街中はたくさんのバイクと自動車がクラクションを鳴らしながら接触しそうな勢いで行き交う。どこへ行っても、人で溢れかえっている。
特徴的なのが、人々がとても活気に満ちていることだ。目の輝きは東京を歩く若者と比較して、比べ物にならないくらいに凄い。おそらく、ベトナムは三年もすれば、日本の成長を追い越してしまうのではないかと感じるほどだった。
ベトナムには日本からスチール階段のメーカーが進出し、住宅メーカーのCADセンターなども続々と開設している。今回はスチール階段メーカーを訪問する機会を得た。この会社では四年前からベトナム研修生を日本に受け入れ、同時に現地に工場を開設して、雇用の促進を図っている。日本での人手不足という現実もあるが、それよりも、ベトナム人の勤勉さに感銘を受け、これからの成長に期待をしているのだという。「研修生はベトナムでは〝ワーカー〟に位置付けられます。高校、大学卒は事務職への道がありますが、ワーカーは日本で言うと、作業員、建設労働者という位置づけです。そのため日本に来て、お金を貯めて、少しでも上を目指そうという気概のある若者もいます」(現地社長)。
お金を貯めて、ベトナムで起業して建材業や工事会社を設立したい者もいる。一方で、このスチールメーカーでは、三年間の実習を終えて現地工場へ帰ると、給与ベースが大きく上がる仕組みにしているのだという。
最初はその仕組みはうまく行くと思っていたが、三年経過した現在、新たな課題が出てきたのだという。それは、高卒・大卒社員が、日本での実習を終えたワーカーに給料が抜かれることに対する不満が手始めているとのこと。一方、日本では勤勉だった実習生がベトナムに帰ってきて現地の仲間と一緒になると、急に人が変わって無断欠勤したりさぼったりすることもあるそうだ。
現在、メーカーだけでなくエクステリア工事会社も、積極的にベトナム実習生を受け入れ始めている。今後、だんだんと今までになかった課題も出てくるだろう。しかしエクステリア業界の職人不足を解決するには、実習生の受け入れも避けて通れない道だ。そして日本市場ではなく、エクステリア工事会社が、ベトナム市場の開拓を行うという動きも出てくるだろう。日本社会全体の産業構造が変わる中、急成長を遂げ始めたベトナムの動きを、エクステリア業界も今後は無視することはできないと確信している。
著者プロフィール
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佐倉慎二郎 ㈱住宅環境社 代表取締役社長
住宅建材業界、エクステリア分野の専門誌記者・編集者25年。2006年より「月刊エクステリア・ワーク」を発行する㈱住宅環境社入社。2014年に代表取締役社長に就任。現在は住宅と外構・エクステリアを融合する「住宅と庭との一体化設計」と、非住宅分野である商業施設(コントラクト市場)における庭空間の市場開拓を探る「サードプレイス『庭・快適空間』」を発刊。ホテル、レストラン、商業施設などに向けての情報提供や、まちづくり、異業種コラボレーションに向けての提案を行っている。
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