エクステリア専門会社が建築士事務所になるチャンスが、考えられる。(月刊エクステリア・ワーク)
エクステリア業界と建築業界とのコラボレーションが、庭と建物本体との同時設計という文脈の延長線上として、ブロック塀の工事の現場にも起こってきそうな雲行きになってきた。
先般、国交省と経産省が建築に関わる施工者団体、設計者団体、製造者団体を集めて初の「安全なブロック塀のあり方」をテーマとする合同会議が開催されたことが、ハウスメーカーや施工者団体の間でちょっとした注目を集めている。
ブロック塀は、建物と一緒に作っても、建物をお施主に引き渡したのちに作ろうとも、「建築物」であることには変わりない。つまり、建築基準法の下に建てる必要があり、確認申請も必要だというのが本来の姿である。しかし、現状は確認申請を出している事例はゼロに近く、大都市圏の防火・準防火地域でのハウスメーカー物件を除いて、新築だろうが後付けだろうが、ブロック塀で確認申請をしているという施工店はほぼいないと思われる。
しかし、今回の会議によって、少なくとも施工者と設計者は、「建築確認申請が必要である、ということを建築主に伝えなければならない」、ということが強調されたのである。
ただ、確認申請が必要な物件は、「建物と同時にブロック塀を建てる場合」と、「防火・純正防火地域では、後からの工事の場合も」という条件が付いている。防火・準防火地域以外の、後付け工事によるブロック塀施工は、「確認申請が必要である」ということを、建築主に伝えなくてもよいのである。つまり、大雑把に言って、田舎の場合は、今まで通りに施工店はある程度自由にブロック塀は建てられる、ということなのだ。
それでは何も今までと変わらないじゃないか―と安心しても良い話ではある。しかし、少なくとも「確認申請」という言葉が、改めて文章化されたというところに、大きな意味があると思うのは、深読みし過ぎだろうか?
もっと言うと、この会議で言うところの「設計者」とは、建築士なのだ。いわゆるエクステリアの設計・施工会社ではない(建築士登録もしているエクステリア会社は別)。建築士にとって設計・管理業務は独占業務である。そのため、改めて「建築物」であることが強調されたブロック塀の検査・管理は、正確に言うと、建築士の独占業務となってくる。
そうなると、今後のエクステリア業界の流れとしては、建築士がブロック塀診断士を取得するという方向が一つある。もう一つが、ブロック塀診断士とエクステリア専門会社が、積極的に建築士免許を取得し、建築士事務所になるという方向性なのではないか。
後者のような流れが出てくれば、業界はもう一段ステップアップするだろう。現に、都市型を得意とするハウスメーカーの設計部隊にいる専門家に話を聞くと、「建築士でもブロック塀のことを知らない人が圧倒的。しかし我々はエクステリア専門プランニング部隊である同時に、建築士を持っている。そしてそれだけでなく、ブロック施工の技能技術においても、建築基準法よりもレベルが高く、かつ、建築主事に対してはしっかりと数値を含めた技術的な説明ができるノウハウを持っている」と話す。したがって今回の合同会議は、いい加減な会社を淘汰し、しっかりした会社が生き残り、きちんと適正なブロック塀を築造できる土壌ができる大きなチャンスになる、と捉えている。危機をチャンスにするヒントが、ブロック塀の世界にも存在しているのである。
著者プロフィール
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佐倉慎二郎 ㈱住宅環境社 代表取締役社長
住宅建材業界、エクステリア分野の専門誌記者・編集者25年。2006年より「月刊エクステリア・ワーク」を発行する㈱住宅環境社入社。2014年に代表取締役社長に就任。現在は住宅と外構・エクステリアを融合する「住宅と庭との一体化設計」と、非住宅分野である商業施設(コントラクト市場)における庭空間の市場開拓を探る「サードプレイス『庭・快適空間』」を発刊。ホテル、レストラン、商業施設などに向けての情報提供や、まちづくり、異業種コラボレーションに向けての提案を行っている。
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