エクステリア専門店の「建物の美観や外構の美しさ」の提案・施工力が ハウスメーカー、地域工務店のブランド力向上に貢献する。

大手ハウスメーカーのブランド力は、予想以上にエンドユーザーに対して浸透している。
我々はエクステリア業界という、広い意味で建築の世界の中にいるので、いくらハウスメーカーが強いブランドを持っていようとも、その供給方法は、レベルの高い地域の工務店・ビルダーと変わらないこともある、ということを知っている。大手ハウスメーカーが持つブランド力とは、知名度、信用度と言い換えても良いだろう。仮に建てられた住宅に瑕疵があったとしても、大手であれば、逃げることはないし、正当な抗議も受け入れてくれるという安心感は大きい。それに対して、地域の工務店・ビルダーは世間的に有名ではないので、何かがあった時に、「いなくなってしまうのではないか」「倒産したら大変だ」といった心配もするのがエンドユーザーの心理である。

これから、ますます少子化が進んでいくと、地域工務店の淘汰も進んでいく可能性がある。当然、その中には健全経営と根強い技術力で勝ち残る会社もあるが、エンドユーザーには「どの工務店が本当に大丈夫なのか」という判断はなかなか難しい。なぜなら、「いまから、我が社は淘汰されます」などと宣言する会社など、あるはずないからだ。その点、大手ハウスメーカーならば安心である。なにはともあれ、いきなり倒産して、工事が未完成になる確率は極めて少ない。しっかりとした保証体制があるから、仮に倒産したとしても、最後のお客さんまで面倒は見てくれる。そこは大きな信頼であろう(※ただし数年前、中堅ハウスメーカーが倒産し完成保証事故が起きた事例はあったが・・・)。

そんな大手ハウスメーカーであるが、信用以外でのブランド力を左右する要因が、最近生まれている。それは、ガーデン・エクステリアである。大手ハウスメーカーのブランドを構成する要素は、知名度、信用度だけでなく、建物の美観や外観の美しさにまで及んできているのだ。

とある首都圏のエクステリア専門店では、昨年まで有名な大手ハウスメーカーの外構下請け工事を行ってきた。値段は厳しいものであった。しかし、ある時にそのハウスメーカーのОB客の家のガーデンリフォームを請けたところ、とても高い満足度を得た。その話が口コミで広がり、富裕層の顧客から、新築の際にも外構を別注でお願いされることが増えてきたという。その後、そのハウスメーカーはエクステリア専門店に対して完全な見積もりと価格決定権を付与し外構プランを一括発注するようになったという。エクステリア専門店はエンドユーザーと直接契約するのと同様な利益を確保することになり、同時にハウスメーカーは、その専門店の高いプランニング力によって、高い値段で顧客にクロージングできるという効果を得たのである。

価値の分かる富裕層に対しては、優れたエクステリアのプランが、住宅そのものの価値向上させる。そしてそれは、大手ハウスメーカーの「ブランド力」を下支えするどころか、ブランドを維持するための不可欠な構成要素として、その地位を確立させているのであ
る。

これからの大手ハウスメーカーにとって、貧相な外構はブランド力を下落させ、逆に美しい外構はブランド力を向上させる。エクステリア専門店は今後、それを地域工務店に対して展開していけば、名もない彼らのブランド力向上にも貢献するというフェーズに入る。

著者プロフィール

株式会社住宅環境社
株式会社住宅環境社佐倉慎二郎
佐倉慎二郎 ㈱住宅環境社 代表取締役社長
住宅建材業界、エクステリア分野の専門誌記者・編集者25年。2006年より「月刊エクステリア・ワーク」を発行する㈱住宅環境社入社。2014年に代表取締役社長に就任。現在は住宅と外構・エクステリアを融合する「住宅と庭との一体化設計」と、非住宅分野である商業施設(コントラクト市場)における庭空間の市場開拓を探る「サードプレイス『庭・快適空間』」を発刊。ホテル、レストラン、商業施設などに向けての情報提供や、まちづくり、異業種コラボレーションに向けての提案を行っている。