宅配ポストの先に見えるものは、もっと、面白い! それは、新たなる「ホーム・ソリューションへの道」
宅配ポストのラインアップが出そろってきた。大手アルミメーカーを筆頭に、エクステリア問屋が展開するオリジナル商品が続々と登場している。
商品傾向を見ると、肝となるロック機構は電子錠とダイヤル錠を採用するメーカーに分かれている。個人宅用のポストでは荷物の受け取り専用が多いが、中には集荷にも対応した商品もある。暗証番号をあらかじめ住み手と配達員が共有しておき、不在の時にも集荷・出荷の両方を可能とするポストまで登場した。サイズは大から小まであり、特に大型は通常の郵便配達ポストと兼用しているものが多い。
デザインは色とりどりで、どれを選ぶかは個人の好みになりそうだ。門袖に取り付けるタイプと機能門柱として取り付けるタイプがあり、ポストの大きさや重量によって選択は変わりそうである。
値段は通常のポストと比較して高価格である。安くても5万円以上で、10万円を超える商品も当たり前のような感じだ。汎用的な小型の物置が5万円程度で選べることを考えると、商品自体の大きさや面積とは関係なく、「宅配ポスト」という意味合いだけで付加価値が上がっていることが分かる。
商品の進化は目を見張るものがあるが、一方で懸念がある。それはブームが去った後の商品の存在価値はどのように考えられているのか、という点である。宅配ポストは日常の不便さから求められたソリューションの一つではある。しかしソリューションの決定打は「商品」ではなくて、「不便さを解消してくれるシステム」にある。つまり住み手がネット通販や宅配便に対する不安やストレスを取り除くことがコトの本質なのだ。極端な話、宅配ポストがなくても不在配送のストレスがなくなり、一人暮らしの女性が家のチャイムを鳴らされることに警戒するような問題が解決されればよい。その時には数多くの宅配ポストが不要になるだろう。これはソフトの部分の話である。
一方で、ハードの面から言うと、商品自体が個別に進化をしていっても、行きつく先は「門袖」か「機能門柱」しかないというのはどうもつまらない。大手物置メーカーを取材すると、「実は数十年位前にゴルフバッグ用の宅配倉庫を作ったがまったく売れなかった」という。昔は今の時代のようなネット通販もなく、スマホもない時代。宅配サービスも現在のようなきめ細かさはなかったはずだ。現代ではあれば、いっそのこと「ポスト」という商品概念にとらわれず、大型の「倉庫」をファサードの一つとして施工してしまえばどうか。ゴルフバックの集荷・出荷もOK、地面を掘って冷蔵機能を付ければクール宅急便も対応可能となるかもしれない。防災倉庫としての機能も考えられる。
宅配ポストを、ポストという商品そのものの進化で考えるのはほぼガラパゴス化である。そうではなくて、ポストは大きくファサードの中に収斂されていき、やがては建物と一体となったホーム・ソリューションシステムとなっていく、そんなストーリーが描ければ、エクステリアはもっと面白い世界になると思う。
著者プロフィール
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佐倉慎二郎 ㈱住宅環境社 代表取締役社長
住宅建材業界、エクステリア分野の専門誌記者・編集者25年。2006年より「月刊エクステリア・ワーク」を発行する㈱住宅環境社入社。2014年に代表取締役社長に就任。現在は住宅と外構・エクステリアを融合する「住宅と庭との一体化設計」と、非住宅分野である商業施設(コントラクト市場)における庭空間の市場開拓を探る「サードプレイス『庭・快適空間』」を発刊。ホテル、レストラン、商業施設などに向けての情報提供や、まちづくり、異業種コラボレーションに向けての提案を行っている。
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