【後編】外構設計のポイントは「統一と変化」。SDGs、環境に優しいエクステリア改修市場にも期待したい。

Q1.今ウッドデッキは人気ですよね。

今は大変人気です。コロナ禍でデッキやテラスでアウトドアの生活は今すごく増えています。エクステリア業界で、そういう需要があって、みんなどこも忙しいみたいです。コロナ禍テレワークのため、ご主人が家で仕事をしていて、よく庭を見て見ると庭が悲惨な状況にとか、外出はあまりできないけれど庭くらいには出れるから、環境を良くしようと、そういう需要が増えているとよく聞きます。

 

Q2.外構工作物は価格で決まってきてしまうという傾向はありますか?

今はコスト重視なのですが、ウッドデッキとか今までは木製で、注入剤により腐りにくくしていました。今はそれよりも樹脂木という樹脂が入った木ですが腐りにくく、色は変化しますが、値段が少し高くてもメンテナンスを重視して、高くても選ぶケースが多いです。メンテナンスは大事なので、値段とメンテナンスのコストバランスがあると思います。必ずしも安いから選ぶというだけではないと思います。

 

Q3.外構工作物を中心に、メーカーの評価はどんなイメージでしょうか?

この間、首都圏で私が手掛けたつくばの住宅地を見学しましたが、首都圏はあまり面白い外構が少ないので、分譲地だけではなくて、新しい建築とか、古い街並みとかを見せています。特に古い街並みから得るものは多いと思います。古い街並みから新商品に結び付けていくと良いのではないでしょうか。今はネットでいくらでも情報が入りますが、やっぱり現物を見ないとだめですね。どのような環境の中にどのようなエクステリアデザインがあるのか、そういったことがわからない。結構喜ばれるのは、自分が開発した商品が分譲地や住宅地についていたりすると、ああこういうふうに付いているのかと感心しています。街並みを現地で見ないと、パソコンの前にいるだけでは本当の良さがわかりません。

この間、日本エクステリア学会の歴史委員会でいろんなメーカーさんのエクステリアの歴史をみて見ると、一時期、どのメーカーも木製品を扱っていたのです。30年くらい前ですね。でも今はそのような商品は全くないです。今は樹脂木とか、シートとか、樹脂木は木質感があるのですが、アルミ商品は30年くらい経ったものと本物素材の商品を見比べるとやっぱり歴然と差が出るわけです。本物というのは、メンテナンスをしなくてはならないですが、味が出てくるのです。やはり工業製品は最初がピークで、どんどん劣化してしまいます。そこで上手に、部分的に商品を変えることで、継続できるような商品があってもいいかなと思います。それがコストとなると厳しいのかもしれませんが、いつもそう思います。以前はアルミ型材なんて絶対使わなかったのですが、今は頻繁に使っています。やはりコストが厳しいのと住宅サッシに合わせるなど、どうしてもアルミ型材を使わざるを得ないのです。

YKKAPの評価については、デザインはすごく良くなっていると思いますね。今まではリクシルが断トツで良かったですが、YKKAPは、市場に入り込むために一生懸命オーダー、特注的でつくっていきながら、商品力を高めてきました。デザインについては設計事務所とかの話を聞いてきていまるのではないかと思います。わりと設計事務所向き商品が多く、他社に比べてオリジナリティーがあると思います。

オリジナル門柱を提案できない住宅地があった時など最近は、カタログをいちいち見るのが大変なので、ネットでキーワード検索して画像を探し、出てくるメーカーのカタログを見るという流れです。最初からカタログをペラペラと見られますけれど、Webカタログを端から見ていくのは大変なので、そのように最近は探しています。その中で、YKKAPの門柱が引っかかりました。景観協定で門柱はいくつかのタイプから選んでくださいと指定します。ここでは全部YKKAPの門柱でした。わりとモダンながらもウッド調でおしゃれな感じで、アルミに木シートが張ってあるものです。ポストを口金、壁付け、見えない様にするというパターンで考えて選択しました。

 

Q4.YKK APについて、こういうところに力を入れたらどうかというところはありますか?

やっぱりデザインは大事で、シンプルな飽きのこないデザインというのは大事で、それと素材感、あとは緑との組み合わせとかです。素材感はアルミではなかなか難しい。アルミを変えたいなといつも思うのですが、なかなかできない。あとは、単体だけで考えないで、組み合わせの調和の商品を考えて欲しいです。特に植栽との組み合わせというのを大事にしてほしいです。メーカーの商品開発の人ですと、フェンス担当はフェンスのデザイン、フェンスの耐久性などしか考えないので、それをどう組み合わせるのかという頭があまり無いのです。

 

Q5.少しデザイン性があって複合的な機能、要素があるのがよいのでしょうか。

デザイン性はやっぱり大事ですね。あとは飽きがこないというところ。最初は目立デザインに特化しすぎると、飽きがくるケースも多いので、飽きがこないようなデザインをと、自分もそうですが、学生にもよく言っています。

 

Q6.飽きがこないデザインというのは難しいですね。

そうですよ、難しいです。長く変わらないデザインというのがあると思うのです。わりとシンプルなものなんじゃないかなと思います。材料は、本当に沢山あって、学生に課題で提案させると材料の種類が多くなります。敷きの材料、縁石の材料、レンガ、石、塗り仕上などいろんな材料が使われると、ひとつひとつを見ると良いのですが、一歩引いて見るとバラバラな感じがあるのです。どうしても素人で、なるべくいろいろ使いたいというのがあるのです。でもなるべく材料はそろえる、増やさないで調和させる方法をとっています。

 

Q7.E&Gでは、特に、どんな点を注意して指導していますか?

エクステリア業界に対して、私はE&Gアカデミーで教えていますが、入ってくる学生は高卒か大卒、就職して何年かして辞めてくる人、最近は主婦も増えていますが、みなさん優秀です。年齢が上にいけば行くほどみんな真剣で、この業界に良いイメージを持って入ってきています。わりとガーデニング系から入ってきてはいますが、自分の敷地を良くしよう、デザインしようとしています。しかし、就職しても辞める人がすごく多いのです。まだやめても同じ業界にいれば良いのですが、仕事が大変で違う業界へ移る人が多いです。それはやっぱり労働条件が良くないのが一番で、次にコンプライアンスが低いことが理由です。大手でもサービス残業があまりに多くて、仕事としては充実していますが、自分の時間がないと業界を去ってしまう人が多く、残念です。やっぱり業界全体がコンプライアンスとか労働条件とかを高め、職人が高齢化していて本当に厳しいので、若い人が魅力を持つようなものを作っていかないと、これでは、いくらメーカーが商品をつくってもそれを施工する人がいなくなってしまい、デザインする人がいなくなってしまいます。

エクステリアメーカーに対しては、やっぱり現物を、現場を見てほしいです。いま建築の設計者もそうですが、皆さん現場に一回も来ないで設計しています。周辺がどうなっているのか分からない状態で設計しています。最近は様々な申請をしなければならなく書類づくりが大変です。補助金とかがあって、書類づくりに追われて、なかなか現場を見にいけない状態です。だから見るというのは大事で、現場だけではなく、良い街並みを見ることが大事です。学生にも悪いものを見ても、自分だったらこうしたほうがいいんじゃないかとか、そういう考えをしたほうがいい、良いものばかり見ているだけではなく、悪いものを見て自分ならこう考える、こうすると良くなるんじゃないかと考えると勉強になると思います。

大学ではまちづくり演習という都市計画系を教えています。E&Gアカデミーでは街並み、分譲宅地を教えています。

一昨年、エクステリア学会の歴史委員から「図説 近代エクステリアの歴史」という本を建築資料社から出しました。私はその中で郊外住宅地の変遷を担当し、大正末期から平成の始まりまで執筆しました。結構面白いと思います。エクステリア歴史の本としては初めてのようです。

エクステリアの仕事をしている若い人が、最近のエクステリアの状況しか知らない、バブルの時にお金をかけ、本物を使ったエクステリア、クローズド外構を知らないのです。そいういう面でも次の世代に伝えることは大事と思います。

 

Q8.E&Gアカデミーを出て住宅のエクステリアをやっていた人に分譲住宅のエクステリアをやってくれっていったとき、すぐにはできないかなと思うんですが、こういうような考えでやったらどうかというアドバイスがあったら教えてください。

分譲住宅の方は、E&Gアカデミーで私が教えていますので、1期に一人くらいは分譲住宅地のエクステリア設計に進む学生がいます。その仕事は一番労働時間が厳しいです。私が計画する外構街並み計画書を提出するのをメインで仕事をしている人もいますが、マンションの外構を設計しているところに就職した人もいます。若いから対応ができると思いますが、私がいつも言うのは、基本はみんな1軒を設計するつもりで学校に入学していますが、まず周辺環境を考えろ、1軒でも周りの家がどうなっているのか考えながら設計しないといけない。周辺を考えて全体の中での家を考える、調和です。統一と変化という言い方をしていますけれど、やはり全体としてはある程度統一していないと困るけれど、全部が同じというのは同一化してしまうのでこの方が問題です。全体としては調和していますけれどもそれぞれは違うという街並みを目指しています。

 

Q9.統一、調和は分かりますが、変化というのはどういうことでしょうか?

変化がないと、同一化してしまう。同一化というのは個性がなくなってしまうということ。みんなどこの家かわからなくなってしまう。同一化は簡単です。同じものをつくればいいから。でも変化をさせながら同一させるというのは、これがなかなか難しいところで、やはりそうじゃないと、同一だと飽きてしまう。日本は、特に土地とか住宅は高いので、ある程度アイデンティティをもって、個々のアイデンティティを高めてあげないといけないし、でも全体としては調和するのが街並みの価値だと思います。全体の住宅地の価値があってその中の1軒、その家が建て替わっても、通り沿いのエクステリアが調和されていれば街並みは維持できます。周りの家は緑があるのに、1軒だけ緑が無くなってしまうと、調和されないけれど、1本でも2本でも緑があれば緑の連続性があり繋がっていくのです。そうすると50年とか100年とか、ある程度価値のある街ができるのではないかと思います。

 

Q10.公共エクステリア設計の現状と問題点、これからについてご意見ください。

公共エクステリア設計をしているのは、個々の1件の設計をしているエクステリア設計ではなく、ランドスケープ会社とか大手の造園会社とかです。大手造園会社は施工をしていますが、意外と設計はやっていなかったりします。建築設計事務所が行うケースも多いのではないでしょうか。ランドスケープを考えていなくて、あまり調和できていないケースもあります。本当は建築設計の人は、本来全部やるのですが、いまはみんな分業化されています。倉庫とか工場とかは意外と建築の設計士がエクステリア設計までするケースが多いのではないかと思います。あとはランドスケープ会社でしょうか。

公共の公園が少なくなったので、ランドスケープ会社は少なくなったような気がします。以前エクステリア設計した大きなクリニックは、スウェーデンハウスが建物をつくりました。スウェーデンハウスの提携外構屋ですと住宅程度しかしたことがないからと、仕事が私の方に頼まれました。大きな敷地の仕事はやったことはほとんどありませんが、住宅地で大きいのはやっていますので、まあそういう面ではできると思いました。

工場とかは、建築の人がカタログを見ながら設計していると思います。建築の人が一番弱いのは緑、植栽です。ただ大型の開発がらみだと、行政の開発協条件で緑地面積を設けなさいというのがあしますが、面積だけ確保しようというのが多く、良く見せようとかあまり考えていないケースが多く、意外と建築の人がよくやっているような気がします。

公園、公共事業が少なくなってきています。ので、そのためランドスケープ会社は減ったと思います。公園設計はまだ少しありますが、でもそんなに新しくできるというのはそんなにないので。

リニューアル需要は今後もっと増えていくと思います。お金が厳しいところもありますが、外回りの環境を上げることで建物の価値も上げるということもあります。

エクステリアはますます建築化しています。住宅もそうですが、ゲートがすごい屋根付きでデザインする、そういう傾向にあります。ゲートもそうですね。法規制が大丈夫だと思いますが、いずれにしてもいまはエクステリアが建築商品的なものがどんどん増えています。建物にサンルームを設けるなど、メーカーは建築的な商品がいま増えています。

 

Q11.外構工作物や設置場所で注目しています。最後に、非住宅系でポイントになりそうなところはどんな点でしょうか?

やはり今はSDGsとか、環境に優しい材料を選んでいくということが大事です。当然つくる時だけではなくて、何十年か経って換える時にきちんとリサイクルできるもの、特に公共系になると当たり前と思います。そういった視点は大事なのと、やはり親しみやすいもの、金物は金物なので親しみやすいもの。木質でなくてもいいのですが、親しみやすい素材感がある経年変化でよくなるもの、といつも言っています。

建物のリニューアルと同じように、外構も改修というのがあっていいと思います。むしろ定期的に改修することによって、改修できるゲートとか、そういう要素があっていいと思います。

住宅の耐用年数は以前30年、今は50年、80年と大手ハウスメーカーであれば可能と思いますが、改修できるということは大事です。エクステリアですとすぐに解体撤去してしまいます。街並みづくりの仕事をしていますと、50年、100年、街並みを変わらないようにしていくには、エクステリア部分がある程度維持できるようにしていくことが大事です。古い街並みを見ると、石積みとかは意外と変わらない。また、ある程度、本物志向で作られていると、変わらないし、部分的に残して半分くらいは変えられると、大きく街並みは変わらないです。

 

インタビュー

浅川 潔(あさかわ・きよし)

まちづくり設計に於ける外構のポジションと求める商品の機能や評価の要素とは?

有限会社コミュニティデザイン代表。1960年生、山梨県甲府市出身。

大学卒業後、不動産会社(分譲住宅設計)、設計コンサルタント会社(都市計画、住宅地計画、街並み計画・設計等)、情景計画研究所時に「佐倉そめい野」に関わり、その後2002年独立後も継続。

住宅地の基本計画・まちなみ計画・設計、まちの運営サポート、街並みガイドライン・景観協定策定等をおこなう、まちづくりプランナー。まち歩きが大好きで、全国の歴史的街並みから分譲住宅地まで相当数を見ています。

代表的な住宅地として、グリーンタウン高尾、東急あすみが丘、京都桂坂、佐倉そめい野、ソシエルみどりの、めばえの街ヴィレッジ、みなみ野結びのまち、リファージュ高坂、などに関わる。

共著:近代エクステリアの歴史(第3章郊外住宅地の変遷)、戸建タウンハウス。

明海大学非常勤講師(まちづくり演習)、E&Gアカデミー講師(街並み講座、分譲地演習担当)
浦安市景観審議会委員、千葉市・浦安市・船橋市・新潟市まちづくりアドバイザー。