1、なぜ、脱下請け?

①脱下請けの潮流

ここ数年、全国各地で、脱下請けをしたいという意欲が高まり、その動きが活発になっています。より短期間に、より効率よく高い生産性を高めたいという要望は、経営者ならどなたでも考えることですね。それには、仕事や時間をコントロールできる立場に立つことです。

たとえば、元請けの言いなりな工事単価や工期でしか工事が請けられないというのでは、なかなか先が見通せません。半ば自動的に仕事が入ってくるという点では、ある程度の安心感はありますが、仕事を産み出し、売上を伸ばし、企業として成長させていくというビジョンは描きにくいですね。

企業化していくことで、夢が明確になり、広がっていきます。そして後継者が育ちやすい経営環境になってきます。しかし元請けになるには、強い営業力が必要だとか、多額の資金力が必要だとか、人財が必要だとかいうことを考え出すと、なかなか先に進めないのも現実です。

そこで、次になにから始めるか、を考えてみましょう。

 

②“地元の仲間づくり”から脱下請けをはじめる

まずは、地元の各職種の専門職が集まり、プロジェクトチーム(PT)を結成し、共同受注していくことから始めてみるのがおすすめです。機械関係などの他業界では、下請け企業が数社集まって、PTで共同受注し、共同制作していく流れが、近年全体に広がっています。1社ではなかなかできないことを、共同で乗り切っていくのです。その「建築版」を地元で目指すのはどうでしょうか。

設計事務所やデザイン事務所、大工、内装、水道、電気、庭師、外装・屋根工事関係、左官、塗装、メーカーなどさまざまな職種の専門家に参加してもらいます。毎月勉強会をし合ったりするほか、交流会やレクレーション、地域奉仕活動、補助金の出る工事へのチャレンジ、共同でイベントを開催するなど考えられます。情報はみんなで持ち寄って共有化し、一つひとつ形にしていきます。さらにまとめ役になれば、やがて元請けになれます。共同出資で会社を新設することも。何よりも地元に仲間がいるので心強いですね。

 

③経営基盤づくりの基本は“情報を大切”にすること

脱下請けへの具体策は次回になりますが、脱下請けの基本となる経営基盤づくりについて、触れておきます。

身近な情報を大切に扱う、大切に育てていくことから始まります。情報は、鮮度が命です。具体的な工事につながるきっかけは、ちょっとした情報の入手からスタートします。エクステリアの場合、庭の草木の手入れをしたい、ガーデニングが好き、家庭菜園をしたい、お庭を見ながらお茶やコヒーを飲みたい、来客が多くリビングを外側に広げたい、ペットと子供を遊ばせたい、孫との思い出をつくりたいなどさまざまなニーズがあります。こういった情報を入手するちょっとしたきっかけが、やがて大きな工事へとつながっていくのです。

しかし現状では、せっかく入手した情報の取り扱いがいい加減になっていたり、簡単に切り捨てられてしまうこともあります。まずは、一度入手した情報は、会社管理として大切に扱うことを基本とします。社内で情報を共有化し、ひとりひとりのお客さまの情報を蓄積することで育てていきます。実はこの蓄積した情報こそが他店にはない、ひとつ先を行く提案できる武器にもなるのです。

(つづく)

著者プロフィール

丹羽 啓勝
丹羽 啓勝株式会社スペース・デザイン研究所
昭和28年生まれ東京都葛飾区出身。昭和51年早大理工学部建築学科卒。準大手建設会社にて、建築工事管理担当。その後、住宅関連FC本部にてサービスシステム企画、開発、SV、教育研修等歴任。平成3年、現在の会社を設立。しばらくの間、大手から中堅ハウスメーカー、不動産会社、建築・リフォームのグループ、FC顧問を務める。現在は、地元密着、顧客密着している本物志向の中小工務店、リフォーム企業、建材店等を主な対象に、マネジメント力、マーケティング力、テクニカル力の3つのバランスの取れた経営環境づくりを支援。