リックスクエア2017を取材して
第3世代の若手エクステリア経営者に共通する
“こだわること”と“こだわらないこと”に学びたい。
【リックスクエア2017を取材して】
- 業界の枠にこだわらない。
- 自社の理想に対して何ができるのか、
どうすればお客さまが喜ぶのか、にこだわる。 - 市場での自社の特異性を異業種をも巻き込みシェアして最大限の価値を発揮する。
先般、エクステリアCADメーカーのユニマットリックが企画した「リックスクエア
2017」というイベントに参加し、ほぼ全会場を取材して回った。そこに登場したエクステリア会社は、〝第三世代〟と名付けられた若い経営者たちだった。
〝第三世代〟とは、1970年くらいからのエクステリア業界の創業者たちが第一世代、そして2005~2015年くらいの10年間で急激にエクステリアのデザイン近代化を推し進めた世代が、第二世代。そして第三世代とは、2015年以降、新しい価値観を志向しながら、既存の常識に左右されない新しい挑戦者たちという位置づけである。
例えば、花道とエクステリアをコラボさせて、海外富裕層への「ニセコリゾートでのライフスタイル提案」を行う札幌の会社があった。売上はまだ1億円程度だが、彼らは既存の大きな園芸会社が出来ないスキマを狙い、札幌の商店街のウォールエクステリア、遊戯店の人工植栽などで独特の提案力を発揮している。今までは大手園芸店が壁面緑化を提案しているだけだった市場で、CADを駆使して店舗外観のビフォー・アフターをプレゼンすることで、大手に勝利して店舗オーナーの心を掴むのだ。
他にも、不動産会社へのコンサル営業を行い、売れる住宅をプロデュースする博多のエクステリア専門店。また、タイル店から業態転換をしてエクステリアに参入し、さらに今度は自ら住宅建築業者となっている大阪の会社。そして、造園的な価値観を追求し、「大地の再生」という壮大なテーマを企業理念に掲げて仕事をしている浜松の造園家など、楽しい面々による本音トークが繰り広げられていた。
彼らに共通するのは、まずは「エクステリア業界」という枠にはまったくこだわっていないという事。自らが掲げる理念に対して、何が出来るのか、そしてお客さんがどのように喜ぶのかを最優先に置いていることだ。
二つ目が、「市場で特異性をアピールするのではなく、自分が有利に出来ることに対して、最大限の価値を発揮できる場所を至上としている」ということ。自分の得意分野を発揮できる「場所」を見つけることで、自然にビジネスを行うというシンプルな思考である。「これを売らなければならない」「奇抜な発想とデザインでライバルに勝つ必要がある」というは、おそらく第一世代、第二世代の考え方だった。第三世代はそうではなくて、「面白い発想があればシェアして一緒に売って行こう」という発想だ。そして出来れば、同業だけでなく、発想を同じにする異業種の人とも積極的に交わって行こうという発想が強い。
利益を一社独占として大きなビルを建てようという野望ではない。自らを必要としてくれる場所を求め、自分の生き方をそこに投影していくという生き方が、おそらく〝第三世代〟の現状なのだろう。
彼らは決して成功モデルではなく、まだ発展途上であるというのも事実だ。その意味で、先駆者や現時点での成功者から見ると物足りない部分もあるかもしれない。しかしそれは、きっと既存業界が失ったポテンシャルや、どこかに置き忘れてきた理想なのかもしれない。
著者プロフィール
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佐倉慎二郎 ㈱住宅環境社 代表取締役社長
住宅建材業界、エクステリア分野の専門誌記者・編集者25年。2006年より「月刊エクステリア・ワーク」を発行する㈱住宅環境社入社。2014年に代表取締役社長に就任。現在は住宅と外構・エクステリアを融合する「住宅と庭との一体化設計」と、非住宅分野である商業施設(コントラクト市場)における庭空間の市場開拓を探る「サードプレイス『庭・快適空間』」を発刊。ホテル、レストラン、商業施設などに向けての情報提供や、まちづくり、異業種コラボレーションに向けての提案を行っている。
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