建築家がエクステリアを積極的に組み込むときに備えて、専門性をみがく。

建築とエクステリアの関係性を考えることが、筆者の大きなテーマとなっている。

そんな中、先般日本を代表する建築家グループとガーデンデザイナーとの対談の企画が実施された。その模様がいよいよ3月1日に発売するエクステリア業界の業界誌
『月刊エクステリア・ワーク』に掲載される予定となっている。

エクステリアのデザインや設計は、建築家にとってどのような価値を持つのか。
果たして、エクステリア業界が称賛する「デザイン」「設計」というものが、彼らの基準から見て、どのようなジャッジが下されるのか。このことは興味がある部分である。しかし今回は、あえて具体的なデザイン論は後回しにして、もっと大きな視点で「建築がエクステリアをコントロールする」という意味についての考察が主要テーマになった。

ビルダー・工務店が住宅を建てた後に、施主に予算が余っていればエクステリアに回るというのがいまの一般的な家づくりである。ここはボリュームゾーンであり、地域によっては差異はあるが、だいたい家の値段は1500万円~3000万円くらいに分布している。予算的にもエクステリアは最低限になることは目に見えている。一方で、建築家が建てる住宅と言うのは、下限が8000万円くらい掛かるのが当たり前の世界だという。

これは金額的には恵まれているのだが、この「高い」という感覚が、ボリュームゾーンの客を遠ざけているという建築家の弱点でもある。従って建築家がこれから生き残って行くには、3000万円くらいの予算を持った人々を、ビルダー・工務店に負けない提案力によってターゲットにしていくという戦法が必要となるのだ。

超高額物件ではないが決してローコストではないという、この3000万円付近の層に対して、「これが本物の家づくり」だということを周知すること。そして建築家の家づくりは、エクステリアという言葉はあまりないが、「庭」とか「造園」といったカテゴリーで、ほとんどの設計の中に組み込まれていることも特徴になるだろう。建築家はビルダー・工務店のように、「余った予算でエクステリア」という設計はしていない。

つまり建築家が家づくりの敷居を下げて、ボリュームゾーンに存在する良客を確保することによって、確実にエクステリアは住宅の標準装備となる。それと共にビルダー・工務店に対してのエクステリアへの意識向上を促していけば、エクステリアの市場はさらに拡大していくことになる。その時代は決してエクステリア業界にとっては脅威ではない。むしろ得意分野に引き寄せるという感覚こそ必要であり、そのためにも、いまエクステリア業界に存在する設計施工店は、建築家へのエクステリア提案やコラボ貢献のために、さらなる専門性の向上とレベルアップをしておく必要があると考えられる。

著者プロフィール

株式会社住宅環境社
株式会社住宅環境社佐倉慎二郎
佐倉慎二郎 ㈱住宅環境社 代表取締役社長
住宅建材業界、エクステリア分野の専門誌記者・編集者25年。2006年より「月刊エクステリア・ワーク」を発行する㈱住宅環境社入社。2014年に代表取締役社長に就任。現在は住宅と外構・エクステリアを融合する「住宅と庭との一体化設計」と、非住宅分野である商業施設(コントラクト市場)における庭空間の市場開拓を探る「サードプレイス『庭・快適空間』」を発刊。ホテル、レストラン、商業施設などに向けての情報提供や、まちづくり、異業種コラボレーションに向けての提案を行っている。

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