「我が社の強み」に学ぶ、5回目 前編「株式会社リバーフォレスト」
「高付加価値提案」で売上実績を上げている工務店をご紹介いたします。
第5回目は、唯一無二のデザイン力で地元はもちろん他県・遠方からの依頼も絶えない福井県福井市の株式会社リバーフォレスト 代表の森川 圭造さんに「我が社の強み」について、お話をお聞きしました。
<会社紹介>
株式会社リバーフォレスト
代表 森川 圭造(もりかわ けいぞう)さん
平成19年、森川建材工業から組織を変更し、株式会社リバーフォレストを創業。以来、個人宅、店舗などのガーデン・エクステリアのデザイン設計・施工のほか、公共事業にも参加。「庭は心を豊かにする場である」という考えに基づき、地域ではナンバーワンのエクステリア専門店として、多くのお客様の心を掴んでいる。
【事業内容】
- ガーデン エクステリアのデザイン設計・施工
- ガーデン エクステリアの資材の販売
- 戸建・店舗のデザインリフォーム
- 展示会・ブース・ショールーム等のデザイン 設計・施工
- 環境事業(福井県、福井市、坂井市の公共事業)
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「受けない仕事」を決めることで、リバーフォレストらしい実績を溜めていく
それが、頭一つ抜きんでるためには必要だと考えました
雪が多い福井の冬は2カ月仕事が止まってしまう
まずはこの期間を持ちこたえられる会社を作りたかった
–リバーフォレストが主戦場としている福井の地域性を教えていただけますか?
福井の人たちは昔から勤勉で粘り強いと言われていて、働き者が多いんです。さらに、あまり派手なことは好まず、堅実に蓄えていく。ですから、多額の資産を持っている人は少なくありません。一戸あたりの土地も広いので、大きな庭もあります。
ところが、外構や庭にお金をかけるという考えがあまりないんですね。少なくとも、私が起業した十数年前までは、外構や庭は母屋の付属品という扱いで、母屋を建てて残った予算を回すというのが珍しくありませんでした。例えば新築の場合、建物の建築を請け負った工務店が、外構は他の会社に外注し、庭は造園業者が行うというパターンがほとんどだったんです。そうなると敷地内のトータルコーディネートはほとんどできません。どこの会社も、自分の受注した範囲だけをそれなりに見栄えよくやるというのがせいぜいという状態になっていました。
これには、福井の自然条件も関係しています。ここ最近は暖冬で雪もあまり降りませんが、基本的には雪が積もっている期間は仕事にならないわけです。毎年2カ月、仕事のない期間が発生すると言うのは、経営的にはなかなか厳しいものがあります。社員が多いほどその負担は大きくなるので、家族経営、もしくは2~3人の職人を抱えた小さな会社がほとんどでした。そんな状態では、エクステリア専門店なんてとても成り立ちません。
創業した時にまず私がめざしたのは、冬の2カ月をなんとか持ちこたえられる会社を作りたいということでした。そのためには地元の個人経営の業者と売上を争うのではなく、企業としてきちんと認められることが必須となります。売上目標は3億で、一般管理費で計上する社員が10人。そこまでを第1段階としてがんばろうと考えました。
「何をやるか」ではなく「何をやらないか」で
リバーフォレストらしさを出していく
–3億を目標として、まず行ったのはどんなことですか?
名前が出ない下請けは断るようにしました。つまり、リバーフォレストとしてお客様と打ち合わせができない仕事はしないということです。さらに、完成した外構・庭の写真を撮らせていただけない仕事もお断りしました。それから、建物とテイストの合わない庭など、リバーフォレストのポリシーと異なるご要望の案件もお断りしたんです。
–え、ちょっと待ってください。会社を立ち上げたばかりで、普通なら「どんな仕事でも選り好みせず…」となりがちな時期ではないでしょうか。
おっしゃるとおりです(笑)。でも、それをやっていると、結局は地元の会社さんと差がつきません。リバーフォレストらしい仕事の実績を溜めることで、「(他のどこでもない)リバーフォレストに、頼みたい」というお客様に来ていただける。それが、頭一つ抜きんでるためには必要だと考えたんです。
幸い、独立前からお付き合いがある工務店からの紹介案件もあったため、まったくゼロからのスタートではありませんでした。実は私は以前、職人をしながらデザインもしていたんです。その方面の専門学校に通っていたことや、親が設計士だったこともあって、図面が描けた。そこで、森川建材で施工を請け負っていた際は、工務店から依頼された案件は実は私のデザインを描いていたということも少なくありませんでした。その時代の実績をかってくれて、リバーフォレストを立ち上げた際に、「デザインから施工までをお願いしたい」と言ってくれる工務店がいくつかありました。
今でも覚えているのは、まだ年商1億くらいの時に工務店から依頼された3000万円の案件。金額もそうですが、その規模のものを信頼して任せてくれたということが、その後の自信につながりましたね。施工したお客様もリバーフォレストの仕事をとても気に入ってくれて、その後、知り合いを何人も紹介してくれました。それをきっかけに、徐々に個人のお客様からも直接依頼を受けるようになりました。
–やはり、紹介による受注が多いのでしょうか。
福井だけじゃなく、大都市圏以外の多くの地域では、やっぱり口コミ、紹介に勝るものはないと思っています。施工写真はプロカメラマンに撮影を頼むなどホームページも充実させていますし、テレビCMも流していますが、そうしたものは、お客様に安心してもらうためのツールでしかありません。
どなたかに紹介されてリバーフォレストという会社に興味を持ってくれた際に、“しょぼい”ホームページだったら「ここに頼んで本当に大丈夫かしら?」と思われてしまいます。逆にテレビCMで見たことがあれば、「ああ、テレビにCMを出せるくらいの会社なら、すぐに潰れたりはしないだろう」と思ってもらえますよね。そういう意味での投資であって、「ホームページを充実させたから、テレビCMを打ったから、これでバンバン問い合わせがくるだろう」とは思っていないんです。
異業種の経営者たちとの交流が
経営とは?経営者とは?を意識するきっかけに
–現在、リバーフォレストに外構や庭を依頼されるお客様はどんな方ですか。
外構や庭だけでちゃんとした予算を見込んでくる方がほとんどですね。中心価格帯としては、200万~1.500万円くらい。若い方でも、親から援助が受けられたり、勤め先が大企業だったりしてローンが組めたりすると、結構な額をポンとはずんでくれます。
個人宅だけではなく店舗など企業のエクステリア工事を行うこともあるのですが、最近では、エクステリアで企業の特徴をアピールしたいとか、エクステリアが売上にも関係すると考えている企業も少しずつ増えています。
リバーフォレストを立ち上げて15年、福井にもようやく、外構・庭にお金をかけるという文化ができてきたかなと。その一旦をリバーフォレストが担っているという自負はあります。
–これまでのお話を伺っていると、創業以来とんとん拍子で来たような印象を受けますが、実際はどうなのでしょうか。
いえいえ、とんでもない。今の時点から振り返ると、かっこいいことはいくらでも言えますが(笑)、15年の間には、うまくいかないことも、この先どうすればいいのかと悩むことも山のようにありました。
そんな時にすごく助けられたのが、青年会議所で知り合った方々の存在です。さまざまな業種の、同年代くらいの経営者が多く所属していたため、刺激を受けることも少なくありませんでした。私の場合、親も同業界だったため、どうしてもこの業界特有の考え方になりがちです。でも、経営という側面で見た場合、他の業界ではまた違うアプローチがあり、そのなかから現状を打開できるヒントをもらうこともたびたびありました。
–例えば、具体的に何かエピソードがあれば教えていただけますか。
たとえば、立ち上げたばかりの頃は、デザインを描いたり、職人として現場に出たりと、自分自身も人員の一人として、目の前の案件にめいっぱい向き合っていました。ただそれをやっていると、それが完成したときに次の仕事がないという状態になってしまうんです。たしかに自分を頭数の一人すると目先の支出は抑えられるんですが、安定的な経営をするなら、それではだめです。経営者の仕事は、次の営業戦略を考えたり、会社がまわる仕組みを整えたりすること。それに気づいてからは、自分自身の経営能力を上げるために、さまざまな勉強会やセミナーにも参加するようになりました。
–森川社長のデザイン力で売上が伸びるという状態から、次のステップへ進むきっかけになったということですね。
そうですね。リバーフォレストの特徴はもちろん、かっこいいデザインなんですが、それがあるだけでは安定経営はできない。逆に、そのデザイン力が仇になって、かっこいい物件をつくるために価格的に無理な受注をしたり、こだわったあまり手間をかけすぎたりと売上は上がるけど利益が出ないという状態にもなりかねません。実際、その数年後にはそういう状態になりかけましたから、この時期に、経営とは?経営者とは?ということを意識できたのは、とても良かったと思います。
立ち上げ時、リバーフォレストらしさを確立するために、あえて「受注しない基準」を決めたという森川さん。次回は、堅実に会社を運営するために行ったことについて伺います。
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