設計者が期待するエクステリア商品とこれからの取り組み
YKK APエクスタイムズ【施設版】掲載原稿
※インタビュア 佐々木勝年(NPO環境持続建築 理事長)
1.最近の取り組みのご紹介
1)私が最近取り組んでいるのは防災とパッシブを組み合わせた商品企画をテーマにしている。日本列島は離島に限らず今や全土が台風被害、風害を受けており台風対策が必要になっている。その中でYKKAPの風に強いサッシは耐風圧性の高いS-6、S-7が用意されており採用した。またエクステリア商品である「ソラリア」はパッシブルームとして採用検討した際、風速42m対応と示してありわかりやすく安心できるため採用することとした。
2)沖縄では、RC構造の場合建設会社が限られるため、計画してから建設まで時間がかかる。最近のリゾートホテルや住宅では比較的資材が入手しやすい木造建築は施工が早く、好まれる傾向がある。沖縄や離島では防風、防雨対策は必須で設計上重要課題である。木造の建物では特に雨戸は重要で暴風雨に耐えられる製品を使用しなければならない。シャッター雨戸の防風性能は重要だが、既存のサッシに非常時用に簡単に取り付けできる仕様の雨戸があるとよい。以前離島の住宅設計で、意匠配慮のため非常時だけ使う雨戸を、合板を使って製作し使用した。石が飛んできても大丈夫なほど頑丈に可動式で設置した経験がある。九州では台風対応でDIYに雨戸のため合板を買いにくる方も多いようだ。要するに防風雨戸として特化した製品を商品化することをメーカーに考えてもらいたい。
3)防風用のコンクリート塀はコストが掛かるためブロック塀にすることがあるが、高さ1.8mは欲しいけれど、ブロック塀の控え壁を作るスペースがとれなくて困ることがある。アルミ製品で控え壁のない耐風性が高くデザインの良い製品も望まれる。
2.設計者が望むエクステリア商品開発や保証、情報の充実
1)工場や物流センターの門扉幅は、最低でも6m以上は必要になる。長さ対応が難しいので、ありきたりの商品が多く、昔から代わり映えしない感がある。未来感のある目新しい機能や防犯性の高い商品化開発が望まれる。カッコよさが設計者の決め手になることは間違いない。
2)門扉の規制は、例えば開口部の幅等は都府県の条例で決まっている。設計者はメーカーのホームページで探すのがほとんどだが、商品説明は掲載されていても、各都府県の条例、指導はどうなっているかの情報はない。しかも条例は都府県によって異なっていることが多く難儀する。WEBカタログ内で条例などの規制面にも言及してくれると設計者にとって大変便利である。
3)商品流通は従来、商品の供給ルートは代理店からである。しかし、これだけネット販売が盛んになってきて、なんでもネットで直接購入できるようになると、商品は施主の直接購入品となり、工務店は商品に対する責任がとれないという。施工を行うにしても製品保証はしないという。しかし購入ルートが違うことで保証が変わるのは変である。そのあたりメーカーとして明確にしていただきたい。
4)メーカーからのネット情報で、商品紹介・説明だけでなくセミナーなどを開いてエクステリアと建築基準法の関係など、具体的な使い方事例を紹介してくれれば設計者は関心を持つし勉強になる。リモートでもいいと思いう。また、メーカーの商品展開も外構全般にわたるものを扱って欲しい。ジャンルが違うかもしれないが例えば、擁壁とか排水なども含めて取り扱って欲しい。
3.メーカーへの要望(エクステリア商品のデザイン、機能について)
1)門扉、フェンスは住宅や構築物にあったデザインで選ぶ。設計者が特別にデザインするような住宅では門扉、フェンスのデザインは特注になってしまうわけだがなかなかメーカーは対応できない。エクステリアメーカーにはオリジナルを求める方をターゲットにした商品がないといえる。自己実現の欲求に応えなければならない時代に対する受注体制は必要だと思う。
2)また門扉はオートロックの機能を付けた門扉の商品が少ない。単身者や2人住まいの需要は新築では減らないと予測されている中、木造アパートの需要はまだ続いており、門扉のオートロック機能のニーズは高い。一方では郵便物のポスティングンのニーズもありポスティング機能と一体化した門扉の商品が求められている。特に避難通路の確保が必要で3m以上の通路が必要となる。そうなると、これに対応した機能門扉があると便利である。
3)「ソラリア」はデザイン性が高く、パーツが多様で優れものだと感じている。ただ「ソラリア」についてメーカーに対応を考えて欲しいことがある。それは建築基準法上の扱いがどうなるか微妙な点。カーポート屋根も同じ。確認申請の際に最初から配置すると建物の一部の扱いになるため、建物完成後の後付けせざるを得ない。完成後の設置は特に支障はないが。建築物として最初から認めさせることができるような商品開発ができないものだろうか。
4.今後の取り組み、セカンドリビングや癒しの空間づくりと防災商品開発へ
1)最近、複数の生活拠点を持つといったライフスタイルの拠点としてセカンドリビングが提案されている。あるいはタイニーハウスやキット小屋など、10㎡以下で、日常的に生活を楽しめる空間も人気が高まっている。昨今のコロナの影響でリモートワークもできる空間としても使える。こういった小屋も外構商品として展開することができる。私は“離れ”の企画を進めている。1日~2日で組み立てられるものが良い。日曜大工的な施工のし易さがポイントである。
2)病院や福祉のためのエクステリアという考え方も増えるだろう。高齢者は老人ホームで生活していればよいというのではなく、庭や外に出て生活するということが必要である。散歩道をつくり、手すりのついた歩き道にアンジュレーションを作り、負荷をかけながら歩く。健康ベンチも配置する。このような健康遊具も面白いと思っている。また、工場や物流センターでのエクステリアのニーズは門、フェンスだけでしょうか。工場では、従業員のための癒しの場が欲しいという話があったので外構工事として休憩施設=カフェテラスと植栽を配置し、職場環境の改善を行った。
3)現在私の事務所では災害対応という視点から、防災トイレや防災簡易ハウスもエクステリア商品として開発中である。
インタビュー
(一級建築士)橋場保則 有限会社スペースクリエイティブ代表
略歴 :「環境共生の街づくり」をテーマにランドスケープ計画に従事し、大型住宅地の外構計画に多数関わる。「緑の都市賞」「街並み景観賞」「グッドデザイン賞」など他多数受賞。
現在の活動:現在は環境・防災・福祉をテーマとしてセルフビルドシステム、レジリエンスハウス、ホースセラピーなどに取り組んでいる。
著者プロフィール
最新の投稿
- ビルガーデンエクステリア2024.11.26【前編】医療と共に介護のニーズに応えて慢性期以降の患者にサービスを提供。修景して鑑賞する対象となるだけでなく、リハビリの一環として、病院を利用する患者と面会者、職員が一体で機能する「庭のある病院」を組み込んだ。
設計事例:富山市のリハビリ・病院施設「野村病院」 - ビルガーデンエクステリア2024.10.29【後編】未来のために、あえて作り込みすぎず余白を残す設計思想「余白のデザイン」を提唱。
【設計事例:角野栄子児童文学館(魔法の文化館)】 - ビルガーデンエクステリア2024.09.25【前編】「芝生のグリーンマウンド」や、安全・安心な歩行者空間など、敷地内外の新たな繋ぎ方をランドスケープから提案
【設計事例:愛知学院大学名城公園キャンパス】 - ビルガーデンエクステリア2024.08.27【後編】物流施設に、ランドスケープというアメニティをデザイン。 「TOWN STATION」や「TOWN AVENUE」、「TOWN PARK」などで繋ぐことで、地域に根差した設計事例紹介。